試験対策・勉強法(基本・独学)

情報処理安全確保支援士のおすすめ参考書5選!レベル別完全ガイド

情報処理安全確保支援士(SC)の試験対策において、「どの参考書を選ぶか」は合否の8割を決めると言っても過言ではありません。

この試験は単なる暗記ではなく、「セキュリティの考え方」や「国語力(記述回答力)」を問われるため、解説の質が低い本を選んでしまうと、いくら時間をかけても点数が伸びないという泥沼に陥ります。

本記事では、数ある参考書の中から本当に使える5冊を厳選し、レベル別の活用ロードマップと共に徹底解説します。あなたの「相棒」となる一冊を見つけ出しましょう。

失敗しない参考書選びの「3つの鉄則」

具体的な本の紹介に入る前に、絶対に外してはいけない「選び方の基準」を共有します。ここを間違えると、買っただけで満足してしまう「積読(つんどく)」コース一直線です。

鉄則①:最新の「シラバス」に対応しているか確認する

セキュリティの世界はドッグイヤー(犬の1年は人間の7年)と呼ばれるほど進化が早く、試験内容も頻繁にアップデートされています。数年前の参考書には「ゼロトラスト」や「コンテナセキュリティ」の詳しい記述がほとんどありませんが、近年の試験ではこれらが頻出です。

必ず「2025年度版」など、最新の年度が記載されているものを選んでください。中古本は法改正や新技術に対応していないため、検定料(約7,500円)をドブに捨てないためにも避けるべきです。

鉄則②:解説の「なぜ」が詳しいか

登録セキスペの午後試験(記述式)では、「なぜその対策が必要なのか?」「なぜその設定ではダメなのか?」を問われます。○×がわかるだけの過去問集では太刀打ちできません。

「選択肢ウが正解の理由は◯◯だが、エが間違いなのは△△だから」というように、不正解の理由まで掘り下げてある本こそが、応用力を育てます。

鉄則③:自分の「現在地」に合わせる

レベルに応じて選ぶべき本は異なります。

  • 知識が浅い方: 専門用語を噛み砕いた「イラスト多め」の本
  • 中級者: 網羅性の高い「辞書的」な本
  • 上級者: 過去問分析や「記述テクニック」に特化した本

背伸びをして最初から難しい本を買うと、最初の30ページ(暗号技術あたり)で心が折れます。自分のレベルに正直になりましょう。

【王道・メインテキスト】まずはこの一冊!全受験生のバイブル

基礎知識を固めるための「教科書」的な存在です。ある程度のIT知識(応用情報技術者レベル)があるなら、ここからスタートするのが最短ルートです。

おすすめ①:『情報処理安全確保支援士「専門知識+科目B」の重点対策』(アイテック)

通称「重点対策」。多くの合格者が口を揃えて「これをやり込めば受かる」と言う名著です。

特徴:

  • 単なる知識の羅列ではなく、「試験に出るポイント」に絞って解説されている
  • 午後試験の記述問題に対するアプローチ(考え方)が非常に丁寧
  • 著者の三好康之氏は、情報処理試験対策の第一人者であり、解説の切り口が鋭い

なぜおすすめか?

この本の一番の強みは、「知識のインプット」と「問題演習」のバランスが絶妙な点です。章ごとに「解説」→「確認問題」→「午後問題の演習」というサイクルが組まれており、読んだ知識をすぐにアウトプットできます。

特に、午後問題特有の「長文読解のコツ」や「解答の導き方」が体系化されているため、「知識はあるはずなのに記述で点が取れない」という人に特効薬となります。

活用法:

最初から最後まで通読するのではなく、まずは苦手な分野(例:認証、ネットワーク)から読み進め、掲載されている問題を解きながら理解を深める「辞書兼問題集」として使うのがベストです。

おすすめ②:『情報処理教科書 情報処理安全確保支援士 2026年版』(翔泳社)

通称「赤本」(※年度によってカバー色は変わりますが、翔泳社のEXAMPRESSシリーズ)。

特徴:

  • 圧倒的な網羅性。試験範囲の用語をほぼ全てカバーしている
  • 図解が多く、ネットワークのパケットの流れや暗号化の仕組みが視覚的に理解しやすい
  • PDF版(電子書籍)が特典で付いてくることが多く、スマホ学習に最適

なぜおすすめか?

「辞書」として最強です。過去問を解いていてわからない単語が出てきたとき、この本を開けばほぼ間違いなく載っています。また、各章の冒頭に「学習のポイント」や「頻出度」が記載されているため、忙しい社会人でも優先順位をつけて学習できます。

注意点:

ページ数が非常に多く(700ページ超え)、物理的に重いです。これを「最初から1ページずつ読む」という勉強法は挫折の元です。あくまで「調べ物用」「体系的な理解用」として手元に置いておくのが正解です。

【実践・過去問】合格ラインを突破するための「武器」

テキストを読んだだけでは合格できません。過去問を解くことで初めて「得点力」が身につきます。

おすすめ③:『2025 情報処理安全確保支援士 総仕上げ問題集』(アイテック)

2025 情報処理安全確保支援士 総仕上げ問題集

特徴:

  • 圧倒的な演習量: 本誌掲載の過去問に加え、PDFダウンロードを含めると計10期分もの過去問を演習できます。「パーフェクトラーニング」の持ち味だった「演習量の確保」を完全にカバーできます。
  • 解説の質が高い: 出版元のアイテックは、おすすめ①で紹介した『重点対策』と同じ出版社です。そのため解説の用語やロジックに一貫性があり、『重点対策』と合わせて使うことで学習効果が倍増します。
  • 新制度対応: もちろん最新のシラバスや、午後試験の統合(旧午後I・IIの廃止)に対応しています。

おすすめの理由: 現在、書店で手に入る過去問集の中で最も収録数が多く、解説も丁寧です。「質」と「量」の両方を求めるなら、この一冊が最も確実な選択肢となります。

【基礎固め】挫折しないための「入門書」

「応用情報の勉強を飛ばしていきなりセキスペを受ける」「実務経験がない」という方は、いきなり上記の「王道本」に行くと危険です。まずは全体像を掴むための「薄い本」から入りましょう。

おすすめ④:『イラスト図解式 この一冊で全部わかるセキュリティの基本』(SBクリエイティブ)

特徴:

  • 試験対策本ではなく、ビジネス書に近い体裁
  • 見開き1テーマで、左ページに文章、右ページに図解という構成
  • 専門用語を極力使わず、日常的な例え話でセキュリティ概念を説明している

おすすめの理由:

「PKIって何?」「ハッシュ関数と暗号化はどう違うの?」といった基礎の基礎を、イメージで掴むのに最適です。試験の点数に直結するわけではありませんが、この本で「セキュリティの全体像(地図)」を頭に入れてから本格的な学習に入ると、理解スピードが段違いになります。

特に、「暗号技術」や「認証」の仕組みがどうしても理解できない人におすすめです。「なんとなくわかる」という感覚を得られれば、次のステップに進む自信がつきます。

【記述・午後対策】あと10点を上乗せする「ドーピング剤」

ある程度勉強したけれど、模試で60点の壁を超えられない。記述式で何を書けばいいかわからない。そんな人のための特効薬です。

おすすめ⑤:『うかる! 情報処理安全確保支援士 午後問題集[第2版]』(日経BP)

通称「村山本」や「速効サプリ」とも呼ばれる、記述対策に特化した名著です。

  • 特徴:
    • ズルい攻略本」というキャッチコピーの通り、正攻法の勉強というよりは「点数を取るためのテクニック」に特化。
    • 過去問を「年度別」ではなく「出題パターン別」に分類し、頻出の解答パターンを効率よく学べる。
    • 左ページに問題、右ページに解説というレイアウトで、テンポよく演習できる。
  • おすすめの理由: この本の真骨頂は、「国語力」をハックする点にあります。 例えば、「問題文のここを見れば、答えは自動的にこうなる」といった「解答の型(テンプレート)」を徹底的に叩き込んでくれます。 「知識はあるはずなのに、記述で減点される」「どうしても模試が50点台で止まる」という人が読むと、一気に合格ライン(60点)を突破できる可能性が高い一冊です。

合格率20%の壁を突破する「参考書活用ロードマップ」

5冊紹介しましたが、これらをどう組み合わせるかが重要です。レベル別の勝利の方程式を提示します。

パターンA:知識が浅い方・独学(知識ゼロからスタート)

  1. 導入: 『イラスト図解式』でざっくりイメージを掴む(1週間)
  2. インプット: 『情報処理安全確保士 教科書(赤本)』を辞書として用意し、Web学習サイト(過去問道場など)と併用して午前IIレベルの知識を固める
  3. アウトプット: 『重点対策』で午後試験の解き方を学ぶ
  4. 仕上げ: 『総仕上げ問題集』で時間を計って演習

このルートは時間がかかりますが、着実に力がつきます。特に「1」を飛ばさないことが、後半の伸び悩みを防ぐコツです。

パターンB:応用情報合格者・実務経験者(効率重視)

  1. メイン: 『重点対策』をいきなり読み始める。知っている分野は飛ばし、苦手分野と午後対策に集中
  2. 補強: 通勤時間に『うかる! 午後問題集』で記述パターンの「型」を暗記
  3. 演習: 公式サイトから過去問をDL、または『総仕上げ問題集』で直近3回分を解く

基礎知識がある人は、分厚い教科書を最初から読む必要はありません。「問題を解く→わからない所を調べる」という逆引き学習が最も効率的です。

参考書代をケチると、再受験料で損をする

情報処理安全確保士の参考書は、1冊3,000円〜4,000円程度と決して安くはありません。しかし、ここで数千円を惜しんで古い本を使ったり、自分に合わない本で時間を浪費したりして不合格になれば、再受験の費用(7,500円)と半年間の勉強時間という莫大なコストがかかります。

自己投資として、最低でも以下の2冊は揃えることを強くおすすめします。

  1. 網羅的なテキスト(辞書代わり)
  2. 解説の詳しい過去問題集

この2冊があれば、独学でも十分に合格ライン(60点)は突破可能です。参考書への投資は、将来的な時間とお金の節約につながると考えましょう。

【番外編】「紙の本」vs「電子書籍」どっちで勉強すべき?

参考書を選ぶ際、もう一つ悩ましいのが「Kindleなどの電子書籍にするか、紙の本にするか」という問題です。結論から言うと、「用途によって使い分ける(二刀流)」が最強の正解です。

紙の本が適しているケース

メインのテキスト・辞書本:

700ページ超えの分厚いテキストは、パラパラとめくって全体像を把握したり、必要な情報を素早く検索したりするのに紙の方が優れています。また、「書き込み」ができるのが最大のメリットです。重要ポイントにマーカーを引く、補足情報を余白に書き込むといった作業は、記憶の定着を助けます。

特に午後試験の過去問演習では、問題用紙に「下線」や「メモ」を書き込みながら解くスタイルが基本となるため、過去問集は絶対に「紙」または「PDFを印刷したもの」を使うべきです。本番は紙の試験ですから、画面だけで演習していると本番でペンの進みが遅くなります。

電子書籍が適しているケース

サブテキスト・読み物:

『うかる! 午後問題集』や『イラスト図解式』のような読み物は、電子書籍がおすすめです。 最大のメリットは「スキマ時間の活用」です。満員電車の中、昼休みのカフェ、寝る前のベッドの中……。分厚い本を取り出すのが億劫な場所でも、スマホやタブレットならサッと勉強を開始できます。

また、電子書籍の「検索機能」も便利です。「あれ、SAMLってなんだっけ?」と思った時、キーワード検索ですぐに該当ページに飛べるのはデジタルならではの強みです。

おすすめの「二刀流」スタイル

私の推奨するスタイルは以下の通りです。

  1. 自宅(ガッツリ勉強): 紙の『総仕上げ問題集』と『教科書』を広げて、机に向かって手を動かす。
  2. 外出先(スキマ勉強): スマホに入れた『重点対策』や『うかる! 午後問題集』のKindle版で、インプットや復習を行う。

このように場所と目的に応じて媒体を変えることで、1日の学習密度を最大化できます。「重いから今日は本を持っていくのをやめよう」という言い訳を自分にさせない環境作りも、合格への重要な戦略の一つです。

効率的な学習スケジュールの立て方

参考書を揃えただけでは合格できません。どのように学習スケジュールを組むかも重要です。ここでは、試験日の6ヶ月前から始める場合の理想的なスケジュールを紹介します。

第1〜2ヶ月:基礎固め期間

この期間は、午前II試験の対策を中心に行います。『イラスト図解式』や『教科書』を使って、セキュリティの基本概念を理解しましょう。

  • 週3〜4日、1日1時間程度の学習時間を確保
  • 暗号技術、ネットワークセキュリティ、アクセス制御など、主要分野を順番に学習
  • Web上の過去問道場などを活用し、午前II問題を1日10問ずつ解く

この時期は「完璧に理解する」ことよりも、「全体像を掴む」ことを優先しましょう。わからない用語があっても、一旦先に進むことが大切です。

第3〜4ヶ月:午後試験の解法習得

ここから本格的に午後試験対策に入ります。『重点対策』を使って、記述式問題の解き方を学びます。

  • 週4〜5日、1日1.5〜2時間の学習時間を確保
  • 午後試験の過去問を、まずは時間無制限で解いてみる
  • 解説を熟読し、「なぜその解答になるのか」を理解する
  • 『うかる! 情報処理安全確保支援士』で、頻出フレーズを暗記し始める

午後試験は長文読解力も問われます。最初は時間がかかっても構わないので、問題文を丁寧に読み、出題者の意図を掴む訓練をしましょう。

第5〜6ヶ月:実戦演習と弱点克服

最後の2ヶ月は、過去問演習を中心に、実戦力を高めます。

  • 週5〜6日、1日2〜3時間の学習時間を確保
  • 『パーフェクトラーニング過去問題集』で、本番と同じ時間制限で演習
  • 間違えた問題は、必ず『教科書』で該当箇所を復習
  • 午前II試験の過去問を繰り返し解き、正答率90%以上を目指す

この時期は、「新しい知識を入れる」よりも、「今ある知識を確実にする」ことが重要です。模試を受けて、本番の雰囲気に慣れておくのもおすすめです。

モチベーション維持のコツ

半年間の学習期間は長く、途中で挫折しそうになることもあるでしょう。ここでは、モチベーションを維持するためのコツを紹介します。

小さな目標を設定する

「合格する」という大きな目標だけでなく、「今週は認証の章を終わらせる」「午前II問題を100問解く」など、小さな目標を設定しましょう。達成感を積み重ねることで、学習を継続しやすくなります。

学習記録をつける

毎日の学習時間や内容を記録することで、自分の成長が可視化されます。「先月は週3日しか勉強できなかったけど、今月は週5日できている」といった進捗が見えると、自信につながります。

仲間を見つける

X(旧Twitter)やブログで、同じ試験を目指している人と交流しましょう。「#情報処理安全確保支援士」などのハッシュタグで検索すると、多くの受験生が情報交換をしています。孤独な戦いではないと感じられることで、モチベーションが維持できます。

合格後のメリットを想像する

資格取得後の自分を具体的にイメージしましょう。昇給、転職、社内での評価向上など、合格によって得られるメリットを思い描くことで、「頑張る理由」が明確になります。

まとめ:あなたに合う一冊は見つかりましたか?

最後に、もう一度おすすめの5冊を整理します。

  1. 『重点対策』(アイテック): 迷ったらこれ。インプットと記述対策のバランスが最強。
  2. 『教科書』(翔泳社): 辞書として手元に置きたい網羅性No.1。
  3. 『総仕上げ問題集』(アイテック): 圧倒的な演習量を誇る過去問集。
  4. 『イラスト図解式』(SBクリエイティブ): 初学者が挫折しないための導入剤。
  5. 『うかる! 午後問題集』(日経BP): 記述試験の点数を「ズルく」稼ぐテクニック集。

参考書は、あなたの戦いのパートナーです。ぜひ、書店で実際に手に取り、パラパラとめくってみてください。「これなら読み進められそうだな」「解説がすっと頭に入ってくるな」と直感で感じた本こそが、あなたにとってのベストセラーです。

相棒となる一冊を決めたら、あとはボロボロになるまで使い倒すのみ。新しい知識で本が手垢にまみれていくほど、合格は近づいています。

次のステップとして、まずは『重点対策』か『教科書』のどちらか一冊を購入し、目次だけでも眺めてみることから始めてみましょう。その小さな一歩が、半年後の「合格」へと繋がっています。

情報処理安全確保支援士の資格は、セキュリティ分野でのキャリアを大きく広げてくれます。適切な参考書を選び、計画的に学習を進めれば、合格は決して夢ではありません。この記事があなたの合格への道標となれば幸いです。応援しています!

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