情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)は、IT系国家資格の最高峰「高度情報処理技術者試験」の一つです。「最高峰」と聞くと、黒い画面にものすごいスピードでコードを打ち込むハッカーのような姿を想像し、「プログラミング経験がない自分には無理だ」と諦めてしまう方も少なくありません。
しかし、断言します。プログラミング未経験でも、文系出身の非エンジニアでも、情報処理安全確保支援士は合格できます。
この試験で問われているのは「プログラムを書く能力」ではなく、「システム全体の仕組みを理解し、リスクを管理する能力」です。コードが一切出てこないわけではありませんが、プログラミング言語と真正面から戦わなくても合格できるルートが存在します。
この記事では、プログラミング未経験者が登録セキスペに合格するための「勉強の比重」と、何を勉強して何を勉強しないかという「捨てる戦略」について徹底解説します。
【重要】令和8年度(2026年度)からの試験制度変更について
本題に入る前に、これから受験を考えている方にとって非常に重要な情報をお伝えします。情報処理安全確保支援士試験は、令和8年度(2026年度)からCBT(Computer Based Testing)方式に移行します。
応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験におけるCBT方式での実施について : https://www.ipa.go.jp/shiken/2026/ap_koudo_sc-cbt.html
CBT方式とは
パソコンを利用して実施する試験です。受験者は試験会場に行き、用意されたパソコンの画面に表示される問題を読み、キーボードとマウスを用いて問題に解答します。
主な変更点
実施時期の変更:従来の春期(4月)と秋期(10月)の年2回から、一定期間内に複数日で試験を実施する形式に変更されます。試験会場は全国に設置され、実施期間中に空席のある試験会場・試験実施日から、各自の都合に合わせて選択して申し込むことができます。
科目名称の変更:受験者が会場ごとに設定された予約枠から自由に受験日時を選択できるようになるため、科目名が変更されます。
- 「午前Ⅰ試験」→「科目A-1試験」
- 「午前Ⅱ試験」→「科目A-2試験」
- 「午後試験」→「科目B試験」
免除制度は継続:従来の午前Ⅰ免除制度は「科目A-1試験免除制度」として、午前Ⅱ免除制度は「科目A-2試験免除制度」として継続されます。
試験内容は変わらない:問われる知識・技能の範囲、出題形式(多肢選択式・記述式)、出題数、試験時間には変更がありません。つまり、試験の難易度や対策方法は基本的に同じです。
CBT方式への移行により、受験の利便性が向上し、自分のスケジュールに合わせて受験日を選べるようになります。これは、仕事や学業との両立を考える受験者にとって大きなメリットです。

情報処理安全確保支援士にプログラミング知識は本当に不要か?
まず、敵を知ることから始めましょう。「プログラミング不要説」は半分正解で、半分間違いです。このニュアンスを正確に理解していないと、試験本番でパニックになります。
「コードを書く」能力はゼロでいい
情報処理安全確保支援士の試験において、「Javaでクラスを設計する」「C++でメモリ管理のコードを書く」といった、プログラマーとしての実装能力を求められることは一切ありません。
科目B試験(旧午後試験)の記述式問題であっても、解答欄に長いプログラムコードを書かせるような問題は出ません。求められるのは、セキュリティ上の欠陥を指摘したり、設定値の不備を修正したりすることです。
つまり、「シェフとして料理を作る(コードを書く)」能力は不要で、「料理評論家として味の変な部分を指摘する(脆弱性を見つける)」能力があればよいのです。エラーを発見する目と、それを言語化する力さえあれば、実際にプログラムを組めなくても十分に対応可能です。

「コードを読む」アレルギーは治す必要がある
一方で、「英語を見ただけで蕁麻疹が出る」レベルでコードを拒絶すると合格は遠のきます。試験では以下のようなものが頻繁に登場します。
- ファイアウォールの設定(ACL)
- WAF(Web Application Firewall)の検知ログ
- HTTPリクエスト/レスポンスのヘッダー
- SQLインジェクションの攻撃文字列
- 短いスクリプト(JavaScriptやPython風の擬似言語)
これらは厳密にはプログラミングではありませんが、非エンジニアからは「呪文」に見えるものです。しかし、これらは「ロジック(論理)」であって「構文(文法)」ではありません。
例えば、ログに WHERE id = '1' OR '1'='1' という文字列があったとき、「これはSQLという言語だ」と身構えるのではなく、「論理的に『1=1』は常に正しい(True)だから、パスワードなしでログインできてしまうんだな」と意味を読み解く力があれば十分です。
このレベルの読解力は、プログラミング経験がなくても、数時間の学習で身につけることができます。構文を覚える必要はなく、「何が起きているのか」を理解できれば合格ラインに到達します。
CBT方式でもコード問題は変わらない
CBT方式に移行しても、画面上に表示されるコードやログの内容は、これまでのペーパー試験と変わらないと想定されます。むしろ、画面上で問題文とコードを同時に見やすくなる可能性もあります。プログラミング未経験者にとって、試験方式の変更は合格の可能性を下げるものではありません。
試験全体の中で「ガチガチのプログラミング知識がないと解けない設問」の割合は2割以下です。残りの8割を確実に取る戦略を立てれば、合格ラインの60点は余裕でクリアできます。CBT方式への移行後も、非エンジニアの合格者は引き続き多数出ることが予想されます。
非エンジニアが勝つための「勉強比重」黄金比
プログラミング未経験者がエンジニアと同じ土俵で戦ってはいけません。限られた勉強時間をどこに投入すべきか、その黄金比(リソース配分)を提示します。
【勉強時間の配分目安】
- ネットワーク基礎(50%) :ここが最重要
- セキュリティマネジメント・法規(30%) :非エンジニアの得点源
- 認証・セキュリティ技術(15%) :仕組みの理解
- プログラミング・Web技術(5%) :最低限のルールだけ

ネットワーク基礎が全体の50%を占める理由
「プログラミングは分からないけれど、合格したい」という方が、絶対に避けて通れないのがネットワークです。実は、セキュリティ試験の正体は「半分以上がネットワーク試験」なのです。
攻撃者はネットワークを通ってやってきます。したがって、守る側もネットワークの仕組みを知らなければ守りようがありません。ファイアウォールの設定、不正アクセスの検知、マルウェアの侵入経路の特定など、すべてネットワークの知識が土台になります。
重点的に学ぶべきネットワーク知識は以下の通りです。
IPアドレスとポート番号:どの扉(ポート)が開いていると危険か。ポート80はHTTP、443はHTTPS、22はSSHといった基本的な対応関係と、「不要なポートは閉じる」という原則を理解します。
DNS:偽サイトに誘導される仕組み(DNSキャッシュポイズニングなど)。攻撃者が正規のドメイン名を偽のIPアドレスに紐付けることで、利用者を偽サイトに誘導する手口を学びます。
HTTP/HTTPS:Webサイトを見るときの裏側の通信内容。リクエストヘッダー、レスポンスヘッダー、Cookieの仕組み、セッション管理など、Webアプリケーションのセキュリティに直結する部分です。
メール(SMTP/POP/IMAP):スパムメールやなりすましメールの仕組み(SPF, DKIM, DMARC)。送信元ドメイン認証の技術を理解することで、フィッシングメール対策の問題に対応できます。
これらはプログラミング言語のような「文法」ではなく、「道路交通法」のような「ルール」です。文系の方でも、一度ルールを覚えてしまえば、パズルのように解くことができます。ここに全勉強時間の半分を費やしてください。ネットワークを制する者がセキスペを制すると言っても過言ではありません。
セキュリティマネジメント・法規が非エンジニアの武器になる
ここが非エンジニアの最大の武器になります。技術的な詳細がわからなくても、「組織としてどう動くべきか」を問う問題です。むしろ、エンジニアよりも事務職や管理職の経験がある方が有利な分野と言えます。
JIS Q 27000(ISMS):情報資産の管理方法。リスクアセスメント、リスク対応、PDCAサイクルなど、組織のセキュリティマネジメントシステムの構築と運用について学びます。
インシデント対応:ウイルス感染時の初動対応(LANケーブルを抜く、証拠保全するなど)。インシデント発生時の報告ルート、被害拡大防止策、再発防止策の立案など、実務的な対応手順が問われます。
法律:個人情報保護法、不正アクセス禁止法、電子署名法、著作権法など。法改正の内容や罰則規定、組織としての対応義務などが出題されます。
この分野は、国語力と常識力がモノを言います。「入館証を紛失したときはどうする?」「退職者のIDはいつ削除する?」といった、実務的な業務フローの問題が多く出題されます。プログラマーよりも、総務や営業、事務の経験がある方が、肌感覚で理解しやすい分野でもあります。
日常業務での経験を活かせるため、暗記というよりは「当たり前のことを答える」感覚で得点できます。ここで確実に30%分の得点を積み上げることが、非エンジニア合格の鍵となります。CBT方式でも、この傾向は変わらないと想定されます。
認証・セキュリティ技術は仕組みの理解に徹する
暗号化、認証、デジタル署名、PKI(公開鍵基盤)など、セキュリティの根幹となる技術分野です。ここは15%の時間配分で、「深い数学的理解」ではなく「何のための技術か」という目的と概要の理解に集中します。
公開鍵暗号方式:秘密鍵と公開鍵の役割分担。「暗号化は公開鍵、復号化は秘密鍵」「署名は秘密鍵、検証は公開鍵」という使い分けを覚えます。
ハッシュ関数:データの改ざん検知に使用。同じデータからは同じハッシュ値が生成され、少しでもデータが変わればハッシュ値も大きく変わるという特性を理解します。
多要素認証:知識(パスワード)、所持(ICカード)、生体(指紋)の組み合わせ。セキュリティ強度を高めるための認証方式の多様化について学びます。
これらの技術は、数式を解く必要はなく、「どういう場面で使うのか」「何が守られるのか」という実用面を押さえれば十分です。例えば、「通信経路の盗聴対策にはSSL/TLS」「パスワードの保存にはハッシュ化」といった対応関係を理解することが重要です。
プログラミング・Web技術は5%で十分
ここは「深入り厳禁」です。C言語のポインタやJavaの継承などを理解しようとすると、それだけで数ヶ月かかってしまいます。やるべきことは一つ、「入力データのチェック漏れ」のパターンを知ることだけです。
XSS(クロスサイトスクリプティング):<script> タグが入っていたら危険。利用者の入力値をそのままHTMLとして出力すると、悪意のあるJavaScriptが実行されてしまいます。
SQLインジェクション:'(シングルクォート)が入っていたら危険。SQL文を文字列連結で組み立てていると、不正なSQL文を注入されてデータベースが操作されてしまいます。
OSコマンドインジェクション:; や | が入っていたら危険。外部コマンドを実行する際に、利用者入力を検証せずに渡すと、任意のOSコマンドを実行されてしまいます。
「特定の文字が入力されたら、無害化(エスケープ)しなければならない」という概念だけを覚えておけば、コードが読めなくても「ここではエスケープ処理が抜けているから脆弱性がある」と解答できます。
プログラミングの細かい文法や、複雑なロジックの追跡は不要です。「入力値チェックの有無」「出力時のエスケープの有無」という2点だけを見る目を養えば、5%の時間投資で必要十分な対策ができます。CBT方式でも、画面上で該当箇所を見つけるという作業は同じと想定されます。
「捨てる」勇気と「拾う」テクニック
具体的な試験対策として、何を捨てて、何を拾うべきかを解説します。満点を取る必要はありません。60点で合格です。つまり、40点は捨てていいのです。この割り切りが、限られた勉強時間を有効活用する鍵となります。
捨ててよい問題(理解できなくても落ち込まない)
過去問演習をしていて、以下の内容が出てきたら、解説を読んで分からなくても「ふーん」で済ませてOKです。完璧主義を捨て、効率を優先しましょう。
C++やJavaの複雑なソースコード読解:10行程度の短いものなら食らいつくべきですが、ページをまたぐような長いソースコードの穴埋め問題が出たら、非エンジニアにはコストパフォーマンスが悪すぎます。その時間は他の問題の見直しに使いましょう。1問に30分かけて部分点を取るより、他の3問を確実に解く方が合格に近づきます。
暗号技術の数学的な詳細:RSA暗号の数式や、楕円曲線暗号の数学的ロジック。これらは「どんな鍵を使うか」「鍵の長さは適切か」という運用面だけ押さえればよく、計算式を理解する必要はありません。「RSAは公開鍵暗号」「鍵長は2048bit以上が推奨」といった実用的な知識で十分です。
アセンブラ・バイナリ解析:マルウェアの解析などでメモリダンプ(16進数の羅列)が出る場合がありますが、これも深追いは不要です。「怪しい挙動をするプログラム」という認識ができれば、詳細な解析手順まで追う必要はありません。
高度な暗号プロトコルの内部仕様:TLS1.3のハンドシェイク手順の詳細、Diffie-Hellman鍵交換の数学的証明など。これらは「通信の暗号化に使われる」「中間者攻撃を防ぐ」という効果だけ理解すれば十分で、内部メカニズムまで追求する必要はありません。
これらの問題は、エンジニアであっても満点を取るのが難しい領域です。非エンジニアが時間をかけても費用対効果が低いため、思い切って捨てる勇気を持ちましょう。CBT方式では画面上で問題を自由に移動できるため、難しい問題はスキップして後回しにしやすくなります。

泥臭く拾うべき「国語」の問題
一方で、絶対に落としてはいけないのが「国語」で解ける問題です。科目B試験(旧午後試験)の問題文は、長文のストーリーになっています。ここにヒントが散りばめられています。
例えば、問題文に次のような記述があったとします。
「A社では、開発部門と運用部門が同じ特権IDを共有して使用しており、誰が操作したか特定できない状態だった。」
そして設問で「A社のID管理の問題点と、改善策を述べよ」と聞かれます。これはITの知識がゼロでも、文章を読めば「IDを共有しているのが悪い」「IDを個別に割り当てるべき」と答えられます。
登録セキスペの科目B試験の3〜4割は、このような「問題文の中に答え(悪いこと)が書いてあり、それを反対にする(良いこと)と正解になる」というパターンが想定されます。
他にも以下のような「国語問題」があります。
- 問題文に「パスワードをExcelファイルで管理していた」→改善策「パスワード管理ツールを導入する」
- 問題文に「全従業員が管理者権限を持っていた」→改善策「最小権限の原則に基づき、必要な権限のみを付与する」
- 問題文に「USBメモリの利用が自由だった」→改善策「USBメモリの利用を申請制にし、暗号化を義務付ける」
プログラミングの勉強をする暇があったら、過去問の長文を読み込み、「文中のヒントを探すウォーリーを探せ」的なトレーニングをする方が、圧倒的に合格に近づきます。蛍光ペンで「問題点」と思われる箇所に線を引きながら読む習慣をつけると、解答すべきポイントが見えてきます。
CBT方式では画面上でマーカー機能やメモ機能が使える可能性があります。これらの機能を活用することで、ペーパー試験よりも効率的に問題文の重要箇所をマークできるようになるでしょう。
用語の「雰囲気」だけ覚える戦略
技術用語は、正確な定義を暗記する必要はありません。「良いやつ」か「悪いやつ」か、「何をするための道具か」だけを覚えます。
- WAF:Webサイトを守る盾。不正なHTTPリクエストをブロックする。
- SIEM:ログをまとめて分析するすごい機械。異常を早期発見する。
- FW(ファイアウォール):関所。ポート番号を見て通すか決める。
- IDS/IPS:監視カメラと警備員。不正アクセスを検知(IDS)または防御(IPS)する。
- VPN:暗号化されたトンネル。公衆回線を安全に使える。
- VLAN:ネットワークの仕切り。部門ごとに分離できる。
このように、自分の言葉で噛み砕いてイメージを持っておくことが重要です。試験中に「SIEMを導入する利点は?」と聞かれたら、「ログをまとめて分析できるから、異常を早期に発見できる」と変換して答えを作れば、部分点は必ずもらえます。
完璧な定義を覚えようとすると、似たような用語で混乱します。「ざっくりとした機能イメージ」を持つことで、文脈から正しい答えを導き出せるようになります。CBT方式でも、選択肢から適切なものを選ぶ際に、このイメージが役立ちます。
プログラミング未経験者のための学習ロードマップ
最後に、具体的な学習のステップを紹介します。期間は3ヶ月〜6ヶ月を想定しています。焦らず、着実にステップを踏んでいきましょう。
Step 1:基礎固め(最初の1ヶ月)
いきなり登録セキスペの参考書を読むと挫折します。まずは、より易しい試験区分の本を読み物として活用します。この段階では「理解する」よりも「慣れる」ことが目的です。
ITパスポートまたは基本情報技術者の用語集:まずはIT用語に慣れてください。「サーバ」「クライアント」「プロトコル」といった言葉が当たり前に感じるレベルを目指します。通勤時間や寝る前の15分を使って、毎日少しずつ用語に触れる習慣をつけましょう。
図解の多いネットワーク入門書:「マスタリングTCP/IP 入門編」は名著ですが、やや専門的です。「図解でわかるネットワークの仕組み」のような、絵が多い本で、データの流れをイメージできるようにします。パケットがどのように伝送されるか、IPアドレスがどう割り振られるかといった基礎を、視覚的に理解することが重要です。
セキュリティ事件のニュースを読む:IPAの「情報セキュリティ10大脅威」や、実際に起きたインシデント事例を読むことで、「なぜセキュリティが必要なのか」という動機付けができます。抽象的な理論より、具体的な被害事例の方が記憶に残りやすくなります。
この1ヶ月で、「IT用語アレルギー」を克服することが最大の目標です。完璧に理解できなくても、「聞いたことがある」レベルまで持っていければ成功です。
Step 2:知識のインプット(次の1〜2ヶ月)
ここで初めて登録セキスペの参考書を使います。基礎固めができていれば、内容がスムーズに入ってくるはずです。
おすすめ参考書:「情報処理安全確保支援士『専門知識+午後問題』の重点対策」(通称:重点対策)や「うかる! 情報処理安全確保支援士 登録セキスペ」(通称:村山本)などが評価が高いです。これらの参考書は、非エンジニアでも理解しやすい説明と、豊富な図解が特徴です。
科目A-2試験(旧午前II)対策:Webサイト「情報処理安全確保支援士ドットコム(過去問道場)」を使い、通勤時間にひたすらクイズを解きます。科目A-2試験は過去問の流用率が非常に高いため、理屈がわからなくても「問題文と答えのセット」を丸暗記すれば突破できます。
目標は過去5年分を9割正解できるレベルです。最初は正答率が低くても気にせず、間違えた問題を繰り返し解くことで、自然と知識が定着します。スマートフォンでスキマ時間に学習できるため、1日30分でも続ければ、2ヶ月で大きな成果が出ます。
科目B試験(旧午後試験)の概要把握:この段階では、まだ科目B試験を解く必要はありません。過去問を1〜2問、「読み物」として眺めてください。どんな問題形式か、どんな長さか、どんな専門用語が出るかを把握するだけで十分です。「敵の姿」を知ることで、心の準備ができます。
ネットワークの実践的理解:自宅のWi-Fiルーターの設定画面を開いてみる、Windowsのコマンドプロンプトで「ipconfig」や「ping」を実行してみるなど、実際に手を動かすことで理解が深まります。座学だけでなく、体験学習を取り入れることで、知識が実感を伴って定着します。
CBT方式の体験:ITパスポート試験や基本情報技術者試験など、既にCBT方式で実施されている試験の体験版やデモがあれば、試しておくとよいでしょう。画面操作やキーボード入力に慣れておくことで、本番での戸惑いを減らせます。
Step 3:実践演習(ラスト1〜2ヶ月)
ここが勝負の分かれ目です。科目B試験(旧午後試験)の過去問を解きます。最初は全く解けなくて当然です。焦らず、正しい方法で訓練を積みましょう。
「写経」をする:最初は全く解けないはずです。考えても時間の無駄なので、すぐに解答例を見ます。そして、解答例をノートに書き写してください。「どういう言い回しで答えているか」を指に覚え込ませます。
例えば、同じ内容を答えるにしても、採点者に伝わる表現とそうでない表現があります。
- ×「IDを使い回さないようにする」
- ○「利用者ごとに固有のIDを付与し、操作ログの追跡可能性を確保する」
このように、試験特有の「カッコいい言い回し」を覚えるのがコツです。写経を5〜10問繰り返すと、自然と「試験で使える表現」が身につきます。
時間配分の訓練:科目B試験は時間との戦いです。本番と同じ時間制限で過去問を解く練習を、最低でも3回は行いましょう。どの問題から解くか、何分で見切りをつけるかという戦略を、本番前に確立しておくことが重要です。
CBT方式では、画面上で問題の移動が容易になるため、解きやすい問題から着手する戦略が取りやすくなります。ただし、時計の位置や残り時間の表示方法など、CBT特有のインターフェースに慣れておく必要があります。
セキュリティインシデント事例を読む:IPAが公開している「情報セキュリティ10大脅威」の解説資料を読みます。実際に起きた事件の手口と対策が物語形式で書かれているため、非エンジニアでも読みやすく、かつそのまま試験対策になります。
模擬試験の活用:可能であれば、市販の模擬試験問題集を購入し、本番と同じ環境(時間、場所、緊張感)で解いてみましょう。自分の弱点が明確になり、残り期間の学習計画を立て直すことができます。
CBT方式の操作練習:試験会場で戸惑わないよう、CBT方式特有の操作(画面のスクロール、問題間の移動、見直しマークの付け方、電卓機能の使い方など)を事前に確認しておきましょう。IPAのWebサイトで操作デモが公開される可能性があるため、公開され次第チェックすることをお勧めします。
直前期の過ごし方:試験1週間前からは、新しい知識を詰め込むのではなく、これまで学んだことの復習に徹しましょう。科目A-2試験の頻出問題、科目B試験の頻出パターン、自分がミスしやすいポイントを重点的に見直します。睡眠時間を削るのは逆効果です。万全の体調で試験に臨むことが、実力を発揮する秘訣です。

CBT方式移行による非エンジニアへの影響
令和8年度からのCBT方式移行は、非エンジニアの受験者にとってプラスに働く要素が多くあります。
受験機会の増加
従来の年2回(春期・秋期)から、一定期間内の複数日で実施されるようになります。これにより、仕事の都合や体調不良で受験できなかったという事態を避けやすくなります。非エンジニアの多くは本業を持ちながらの受験となるため、スケジュール調整の自由度が高まることは大きなメリットです。
会場・日時の選択肢
全国各地の試験会場から、自分に都合の良い場所と時間を選べるようになります。遠方への移動負担が減り、慣れた地域で受験できることで、精神的な余裕が生まれます。
画面での問題閲覧
長文問題を読む際、画面上でスクロールしながら必要な箇所を何度でも見返せます。ペーパー試験のようにページをめくる手間がなくなり、問題文とコードを同時に見やすくなる可能性があります。特に「国語力」で勝負する非エンジニアにとって、文章の読みやすさは重要な要素です。
入力の効率化
記述式問題の解答をキーボードで入力できるため、手書きで文字を書くよりも速く、読みやすく記述できます。特に、専門用語や英数字の入力において、手書きの癖による減点リスクが減ります。タイピングが得意な方にとっては、むしろ有利に働くでしょう。
注意点:タイピングスキル
一方で、キーボード入力に不慣れな方は、事前にタイピング練習をしておく必要があります。日本語入力の変換ミスや、記号の入力方法に戸惑わないよう、準備しておきましょう。
よくある質問と回答
ここでは、プログラミング未経験者からよく寄せられる質問に答えます。
Q1:文系出身で数学も苦手ですが、本当に合格できますか?
A:はい、合格できます。確かに暗号技術の一部で数式が登場しますが、計算問題が出るわけではありません。「公開鍵暗号は秘密鍵と公開鍵を使う」「ハッシュ関数は一方向性がある」といった概念を理解すれば十分です。むしろ、文章読解力や論理的思考力の方が重要で、これは文系の方が得意とする分野です。
Q2:勉強時間はどのくらい必要ですか?
A:個人差がありますが、プログラミング未経験者の場合、200〜300時間が目安です。1日2時間確保できれば、3〜5ヶ月で合格レベルに到達できます。ただし、効率的な学習計画を立てることが重要で、闇雲に時間をかけても効果は薄いです。本記事で紹介した「勉強比重」を参考に、メリハリをつけた学習を心がけてください。
Q3:科目A-1試験(旧午前I試験)の免除制度は使うべきですか?
A:絶対に使うべきです。科目A-1試験は基本情報技術者試験などに合格していれば2年間免除されます。また、過去に情報処理技術者試験の科目A-1試験(または旧制度の午前試験)で基準点以上を取得していれば免除されます。この制度を使わない手はありません。科目A-2試験と科目B試験に集中できるため、合格率が大幅に上がります。
Q4:独学では不安です。スクールに通うべきですか?
A:独学でも十分合格できます。本記事で紹介した学習方法と、市販の参考書、過去問道場があれば、教材としては十分です。ただし、モチベーション維持に不安がある方や、分からない箇所を質問したい方は、オンライン学習サービスや資格スクールを活用するのも一つの手です。費用対効果を考えて判断しましょう。
Q5:CBT方式の試験は何度でも受験できますか?
A:はい、何度でも受験できます。ただし、CBT方式移行後の具体的な受験回数制限やインターバル期間については、IPAから正式発表があり次第確認してください。従来の年2回受験と比べ、受験機会が増える可能性が高いため、諦めずに挑戦し続ければ、必ず合格できます。科目A-2試験に合格していれば、その後2年間は科目A-2試験免除で科目B試験のみ受験できます。
Q6:CBT方式になると難易度は変わりますか?
A:IPAの公式発表によれば、問われる知識・技能の範囲、出題形式、出題数、試験時間に変更はありません。つまり、試験の難易度は基本的に同じです。ただし、画面上での問題閲覧やキーボード入力に慣れているかどうかで、体感的な難易度は変わる可能性があります。事前に操作に慣れておくことが重要です。
まとめ:プログラミングの壁は「幻」である
「情報処理安全確保支援士はエンジニアだけの資格」というのは、完全な誤解です。むしろ、システム開発の現場に染まっていない分、「ユーザ視点」や「経営視点」でリスクを見積もることができる非エンジニアの方が、スムーズに解答できる問題すらあります。
プログラミングという「高い壁」があるように見えますが、近づいてよく見れば、それは横に回り道ができる「低いフェンス」に過ぎません。
非エンジニアが合格するための3つの真実
- コードは書かなくていい。読むフリができればいい。:試験で求められるのは、プログラムを実装する能力ではなく、コードの中から脆弱性を見つける能力です。完璧に理解できなくても、「怪しい箇所」を指摘できればOKです。
- ネットワークとマネジメントで8割取れる。:プログラミングを避けても、ネットワーク基礎とセキュリティマネジメントを固めれば、合格点の60点を大きく超えることができます。自分の強みを活かせる分野に注力しましょう。
- 国語力で勝負できる。:科目B試験(旧午後試験)の多くは、問題文の中にヒントが隠されています。長文読解力と論理的思考力があれば、技術的な深い知識がなくても正解を導き出せます。文系の強みを最大限に活かしましょう。
CBT方式移行は追い風
令和8年度からのCBT方式移行は、非エンジニアにとって追い風となる可能性が高いです。受験機会の増加、スケジュールの柔軟性、画面での問題閲覧、キーボード入力など、むしろ利便性が向上する要素が多くあります。
試験内容自体は変わらないため、これまでの合格メソッドはそのまま通用します。正しい戦略と効率的な学習方法で、ぜひ合格を勝ち取ってください。
最後に
情報処理安全確保支援士は、決して「プログラマーのための資格」ではありません。組織全体のセキュリティを守るためには、技術だけでなく、マネジメント、法規、リスク管理など、多角的な知識が必要です。むしろ、非エンジニアの視点が貴重な場面も多いのです。
黒い画面への恐怖心を、知的好奇心に変えることができれば、合格証書はあなたの手の中にあります。正しい戦略と効率的な学習方法で、ぜひ合格を勝ち取ってください。
プログラミング未経験でも、諦める必要は全くありません。この記事で紹介した「勉強比重」と「捨てる戦略」を実践すれば、必ず道は開けます。CBT方式という新しい形式も、恐れる必要はありません。むしろ、より受験しやすくなったと前向きに捉えましょう。
今日から、あなたの挑戦を始めましょう。