情報処理安全確保支援士(SC)試験は、2026年度(令和8年度)から実施方式が大きく変わります。長年続いた紙のマークシートと手書き記述の試験が、試験会場のパソコンで解答するCBT方式(Computer Based Testing)へ移行し、あわせて「午前I・午前II・午後」という科目名も「科目A-1・科目A-2・科目B」へ変更されます。試験時期も春期・秋期の年2回制から、前期(2026年10月〜11月)・後期(2027年2月〜3月)の期間実施型に変わります。
この記事では、IPA公式発表を根拠に「何が変わり、何が変わらないのか」を正確に整理し、従来の紙試験を前提とした対策をどう変えるべきかまで踏み込んで解説します。筆者はインフラエンジニアからCIOまで、システムの移行プロジェクトを何度も経験してきましたが、移行で失敗するのは決まって「変わる部分」と「変わらない部分」の切り分けを誤ったときです。試験制度の変更もまったく同じで、変わらない本質(出題範囲・合格基準)を見失って対策を全部作り直すのも、変わる部分(解答方法・スケジュール)を軽視して本番で戸惑うのも、どちらも失点につながります。この記事を読めば、2026年度の受験計画を自信を持って立て直せるようになります。
2026年度のSC試験制度変更の全体像:CBT化・名称変更・スケジュール変更
まず、IPAが公式に発表した制度変更の全体像を押さえます。変更は大きく「実施方式(CBT化)」「科目名称」「実施時期」の3点です。IPAは2025年8月12日のプレス発表で、応用情報技術者試験(AP)、高度試験8区分、そして情報処理安全確保支援士試験のCBT方式移行を公表しました。
CBT方式とは何か:紙とペンからキーボードとマウスへ
CBT方式とは、試験会場に用意されたパソコンの画面に表示される問題を読み、キーボードとマウスを使って解答する試験方式です。すでに基本情報技術者試験(FE)や情報セキュリティマネジメント試験(SG)はCBT方式へ移行済みで、2026年度からはAP・高度試験・SC試験もこれに続く形になります。
SC試験にとって特に大きいのは、記述式の科目B(旧・午後試験)もパソコンで解答する点です。IPAの発表では、記述式問題では文章の途中への語句の挿入や削除が容易になり、書き直しの手間がペーパー方式に比べて大幅に軽減されるとしています。手書きで消しゴムを使いながら40字の記述解答を練り直してきた経験のある方なら、この変化の大きさが実感できるはずです。
なお、身体の不自由等によりCBT方式で受験できない方には、ペーパー方式(筆記)による特別措置試験が実施される予定です。
科目名称の変更:午前I・午前IIは科目A-1・科目A-2、午後は科目Bへ
CBT化にあわせて、科目の名称が次のように変わります。

- 午前I試験 → 科目A-1試験(50分・多肢選択式)
- 午前II試験 → 科目A-2試験(40分・多肢選択式)
- 午後試験 → 科目B試験(150分・記述式)
APでは「午前→科目A」「午後→科目B」、午後がIとIIに分かれる高度試験区分では「午後I→科目B-1」「午後II→科目B-2」となりますが、SC試験の午後は2023年度からすでに1科目に統合されているため、科目Bも1科目のままです。
ここで学び始めの人がつまずきやすいのが、名称変更と中身の変更を混同することです。名前が変わると内容も刷新されたように感じますが、後述のとおり2026年度は出題範囲も出題形式も変わりません。「科目A-1=旧午前I」「科目A-2=旧午前II」「科目B=旧午後」と機械的に読み替えれば、既存の教材・過去問はそのまま使えます。
また、免除制度の名称も読み替えになります。従来の午前I免除制度は科目A-1試験免除制度として、午前II免除制度(登録セキスペ向けの講習修了等による免除)は科目A-2試験免除制度として、内容を変えずに継続される予定です。
実施時期の変更:春期・秋期から前期・後期へ
従来の「春期(4月)・秋期(10月)に全国一斉で1日実施」というスタイルは廃止され、一定期間内の複数日で試験を実施する方式に変わります。2026年度のSC試験の日程はIPAから次のとおり公表されています(2026年7月6日公開時点の予定)。

前期試験
- 申込受付期間:2026年10月6日(火)〜10月24日(土)
- 科目A-1・A-2試験:2026年10月17日(土)〜10月27日(火)
- 科目B試験:2026年11月11日(水)〜11月23日(月)
後期試験
- 申込受付期間:2027年1月27日(水)〜2月27日(土)
- 科目A-1・A-2試験:2027年2月20日(土)〜3月2日(火)
- 科目B試験:2027年3月16日(火)〜3月28日(日)
注目すべきポイントは3つあります。第一に、2026年度は春期試験が実施されませんでした。従来なら2026年4月に春期試験があったところですが、CBT移行に伴い2026年度最初の試験は10月開始の前期試験です。つまり、この記事を読んでいる今から前期の科目A試験(10月17日開始)まで約3か月。申込受付は10月6日開始なので、いま学習計画を立て始めればちょうど間に合うタイミングです。
第二に、科目A群と科目B群は別の日に受験する点です。従来は1日で午前Iから午後まで通しで受験しましたが、CBT方式では科目A-1・A-2の実施期間と科目Bの実施期間が分かれており、申込時に両方の日時を同時に予約する仕組みが予定されています。受験者は空席のある会場・日時を自分の都合で選択できます。
第三に、SC試験は前期・後期の両方で受験機会がある点です。高度試験はNW・SAなどが前期のみ、DB・PMなどが後期のみと区分が分かれますが、SC試験は年2回の受験機会が維持されます。ただし前期・後期それぞれで申込みは1回のみで、同一期間内に複数回の受験はできません。受験手数料は7,500円(SC試験は非課税)で変更ありません。
変わる点と変わらない点:出題範囲・形式・合格基準はそのまま
制度変更のニュースを見て「教材を買い直すべきか」「過去問はもう使えないのか」と不安になる方が多いのですが、結論から言うと2026年度は学習内容を変える必要はありません。ここでは「変わらない点」を正確に押さえたうえで、「変わる点」を受験者目線で整理します。

験制度変更のうち、「変わる点」(実施方式のCBT化・科目名称・実施時期・解答方法)と「変わらない点」(出題範囲・出題形式・試験時間・出題数・合格基準・免除制度)を左右に対比した図です。
変わらない点:知識・技能の範囲、出題形式、試験時間、免除制度
IPAは公式発表で、実施方式はペーパー方式からCBT方式に変わるものの、次の点は変更しないと明言しています。
- 各試験区分で問う知識・技能の範囲:シラバス上の出題範囲はそのままです
- 出題形式:科目A-1・A-2は多肢選択式(4択)、科目Bは記述式のまま
- 出題数・解答数:問題数の構成に変更なし
- 試験時間:科目A-1が50分、科目A-2が40分、科目Bが150分(科目A-1とA-2の間に10分の休憩)
- 免除制度:午前I免除は科目A-1試験免除制度、午前II免除は科目A-2試験免除制度として継続
つまり、市販の参考書、IPA公開の過去問、午後(科目B)の記述演習といった従来の学習資産は、2026年度もすべて有効です。すでに午前I免除の権利を持っている方や、登録セキスペの講習修了による午前II免除を予定している方も、権利は新名称の免除制度にそのまま引き継がれます。
変わる点:解答方法・受験体験・スケジュール感覚
一方で、受験当日の体験は大きく変わります。
- 画面上での問題読解:問題冊子に書き込みながら読む従来のスタイルから、画面上で長文を読み解くスタイルへ
- キーボードでの記述解答:科目Bの記述解答は手書きからキーボード入力へ。挿入・削除・書き直しが容易になる
- 科目Aと科目Bが別日:1日で完結しない分、体力面の負担は減るが、学習ピークを2回作る必要がある
- 受験日を自分で選ぶ:全国一斉の「試験日に合わせて仕上げる」から「自分で締切を設定する」スタイルへ
インフラ講師として新卒エンジニアを教えていた経験から言うと、締切を自分で決められる環境は、計画的に学習を積み上げられる人には追い風ですが、締切駆動でしか動けない人には落とし穴になります。「いつでも受けられる」は「いつまでも受けない」と紙一重です。申込時に受験日を確定させる仕組みなので、先に申し込んで締切を固定してしまうのが確実です。
学び始めの人が誤解しやすいポイント
制度変更に関して、SNSや検索結果で見かける誤解を整理しておきます。
- 誤解1「CBT化で問題が簡単になる」:出題範囲・形式・合格基準は変わりません。FE試験のCBT化時にも同様の噂がありましたが、2026年度のSC試験の科目Bは記述式のまま維持されます
- 誤解2「科目Bは選択式になる」:FE試験の「科目B」が多肢選択式であることから混同されがちですが、2026年度のSC試験の科目Bは記述式です。同じ「科目B」という名称でも試験区分によって形式は異なります。なお、2027年度の新制度では科目Bの出題形式の変更が予定されています(後述)
- 誤解3「2026年度も春に受験できたはず」:2026年度に春期試験は実施されていません。2026年度最初の受験機会は10月開始の前期試験です
- 誤解4「過去問が無駄になる」:知識・技能の範囲に変更はないため、過去問演習の価値は変わりません
なお、IPAは「今回公表した情報は現時点での予定であり、今後変更となる可能性もある」と付記しています。受験直前には必ずIPA公式サイトで最新情報を確認してください。
CBT化で対策はどう変える?科目A・科目B別の学習法アップデート
出題内容が変わらない以上、対策の土台は従来どおりです。そのうえで、CBT方式ならではの「解答環境の変化」に適応するための調整を科目別に解説します。
科目A-1・A-2対策:画面での過去問演習に切り替える
科目A(旧午前)は4択の知識問題なので、CBT化の影響は比較的小さい領域です。ただし、紙の問題冊子に印を付けながら消去法で絞り込む癖がある人は、画面上で同じ思考プロセスを再現する練習が必要です。
具体的には、過去問演習を紙の問題集からWebベースの過去問サイトやアプリに切り替えることをおすすめします。画面で問題を読み、画面上で選択する動作を日常の演習から習慣化しておけば、本番環境とのギャップを最小化できます。すでにスマートフォンの過去問アプリで隙間時間学習をしている人は、期せずしてCBT対応の演習ができていたことになります。
科目A-1(旧午前I)は応用情報の午前問題からの流用が中心、科目A-2(旧午前II)はセキュリティ・ネットワーク分野中心という出題構造も変わりません。免除制度を活用できる人は最大限活用し、科目Bに学習時間を集中させる戦略も従来どおり有効です。
科目B対策:手書き練習からタイピング練習へ
最も対策を見直すべきなのが科目B(旧午後)です。従来のSC試験対策では「制限字数内に手書きで収める練習」「漢字を正確に書く練習」が定番でしたが、CBT化でこの前提が変わります。
- 手書きの字数感覚からタイピングの字数感覚へ:40字前後の記述解答を、キーボードで打ちながら推敲する練習に切り替えます。テキストエディタで過去問の記述解答を書く演習が効果的です
- 推敲のしやすさを活かす:手書きでは「書き直しのコストが高いから最初に構成を固める」のが鉄則でしたが、CBTでは下書き→修正のサイクルを高速に回せます。まず要素を書き出してから削って整える解答スタイルが取りやすくなります
- 漢字の書き取り練習は不要になる:手書きで「改ざん」「脆弱性」を正確に書く練習は不要になります。一方、かな漢字変換の誤変換(例:「暗号化」と「暗号科」)には注意が必要です
ここで注意したいのは、推敲が容易になることと、解答の質が上がることは別だという点です。設問の題意を外した解答は、何度書き直しても点になりません。問題文から根拠を拾い、問われていることに正面から答えるという記述対策の本質は、紙でもCBTでも変わりません。
また、長文の問題を画面で読む負荷は紙より高いと感じる人が多いため、IPA公開の過去問PDFを印刷せずに画面で読み、画面上でメモを取りながら解く演習を取り入れてください。CBT試験で提供されるメモ環境(メモ用紙等)の詳細は現時点で公表されていないため、直前期にIPAの受験案内で確認することをおすすめします。
年間スケジュールの立て直し方:前期・後期をどう使うか
年2回の受験機会が「10月〜11月」と「2月〜3月」に移ったことで、学習計画の組み方も変わります。
- 前期(2026年10月〜11月)を本命にする場合:夏をピークに仕上げる計画になります。科目Aを10月中旬〜下旬、科目Bを11月中旬〜下旬に受験するため、9月〜10月は科目A対策、10月下旬〜11月上旬は科目B追い込みという2段構えが組めます
- 後期(2027年2月〜3月)を本命にする場合:年末年始を挟んだ学習計画になります。前期を「腕試し」として使い、後期で確実に仕留める2回戦略も、受験機会が年2回維持されたSC試験なら可能です
- 科目間の間隔を活かす:科目Aと科目Bの試験日が2週間以上離れているため、科目Aの受験直後から科目B対策に全振りする集中期間を作れます。従来の「1日ですべて仕上げる」試験では不可能だった時間配分です
前述のとおり申込期間は限られている(前期は2026年10月6日〜10月24日)ため、「試験期間が長いからまだ大丈夫」と申込みを先送りにしないことが最初の関門です。
2027年度の新試験制度も視野に:現行制度は2026年度で終了予定
もう一つ、受験計画に関わる重要な事実があります。IPAの発表によると、現行の試験制度は2026年度の試験実施をもって終了し、2027年度から新試験制度へ移行する予定です。つまり2026年度のCBT化は、より大きな制度刷新への橋渡しという位置づけです。
2027年度以降に予定されているSC試験の変更
IPAが公表している検討状況(2026年3月31日公開)によると、2027年度からのSC試験では次の変更が予定されています。
- 科目Aの出題範囲体系の変更:表記変更等が中心で、問う知識・技能の範囲そのものに変更はないとされています
- 科目Bの出題範囲の一部変更:マネジメント分野の強化等が予定されています
- 試験時間・出題数の変更:科目A-1が45分・30問、科目A-2が35分・25問、科目Bが120分・12問という構成が示されています
- 科目Bの出題形式の変更:試験時間とあわせて科目Bの出題形式の変更も予定されています(記述式からどう変わるかの詳細は、今後公表される改定案・シラバス案で示される見込みです)
- 科目A-2免除制度は変更しない予定:登録セキスペ向けの免除は新制度でも維持される見込みです
新制度のSC試験は2027年度の夏頃から秋頃に開始予定とされています。科目Bが150分から120分へ短縮され、出題形式の変更やマネジメント分野の強化が予定されるなど、2027年度は出題の中身にも手が入ります。
「2026年度中に合格を狙う」戦略の合理性
この移行スケジュールを踏まえると、現行の出題範囲・形式のまま受験できるのは2026年度の前期・後期(実施は2027年3月まで)が最後になります。既存の教材・過去問資産と出題傾向の蓄積をフルに活かせるうちに合格を狙うなら、2026年度の2回の受験機会は貴重です。
CIOとしてIT投資の意思決定をしてきた立場から言えば、これは「既存資産の減価が確定しているなら、価値があるうちに回収する」という判断そのものです。もちろん2027年度以降も知識・技能の範囲は大きくは変わらない見込みですが、新形式の初回は過去問による傾向分析ができないという不確実性を抱えます。準備が間に合うなら2026年度で決める、間に合わないなら無理せず新制度のシラバス公開を待って計画するという二択で考えるのが現実的です。
【演習】SC試験CBT化と2026年度制度変更の理解度チェック(全10問)
試験制度そのものは科目A-2の出題対象ではありませんが、受験計画を誤ると学習内容以前の問題で機会を失います。定番の混同ポイントは「名称変更と内容変更の取り違え」「FE試験の科目B(多肢選択式)とSC試験の科目B(記述式)の混同」「変わる点と変わらない点の整理」です。以下の練習問題で本記事の理解度を確認してみましょう。
まとめ:制度は変わっても、問われる力は変わらない
2026年度のSC試験制度変更の要点を整理します。
- 実施方式:紙からCBT方式へ。記述式の科目Bもキーボード入力になる
- 名称:午前I→科目A-1、午前II→科目A-2、午後→科目B。免除制度も名称を読み替えて継続
- 時期:春期・秋期から前期(2026年10月〜11月)・後期(2027年2月〜3月)へ。2026年春の試験はない
- 変わらないもの:出題範囲、出題形式、出題数、試験時間、免除制度の中身
- 対策の変え方:学習内容はそのまま、演習環境を画面・キーボードに寄せる。申込みで受験日を早めに確定する
- 先の展望:現行制度は2026年度で終了予定。2027年度から科目Bの時間短縮・出題形式の変更やマネジメント分野強化を含む新制度へ
システム移行でもっとも危険なのは、変化そのものではなく、変化への過剰反応と無反応の両極端です。インフラの現場でも、OSの移行のたびに「全部作り直しだ」と騒ぐ人と「何も変わらない」と高をくくる人の両方がトラブルを起こしてきました。SC試験のCBT化も同じで、問われるセキュリティの知識と実務的な思考力という本質は変わりません。変わるのは解答の手段とスケジュールです。この記事で整理した「変わる点・変わらない点」を踏まえて、落ち着いて受験計画を立て直してください。年2回の受験機会が維持されたことは、私たち受験者にとって間違いなく追い風です。
本記事は情報処理安全確保支援士(SC)試験対策を目的として作成しています。