企業活動は、午前1(科目A-1)のストラテジ系で「唯一まとまった計算が出る分野」です。損益分岐点売上高、在庫の評価、減価償却、待ち行列、線形計画法。会計と数学が同時にやってくるため、テクノロジ系が得意な人ほど身構えます。ところが実際に出るのは、公式に数字を当てはめれば終わる問題がほとんどです。難所は計算そのものではなく、「どの公式を呼び出すか」を用語から判断する部分にあります。
そこで本記事は、公式と数値例をセットで並べる形で進めます。読み終えたときに、問題文のキーワードを見た瞬間に使う式が浮かぶ状態を目指します。
なお、SC試験は2026年度からCBT方式へ移行し、試験区分の名称も変更されます。午前Ⅰが科目A-1、午前Ⅱが科目A-2、午後が科目Bという呼び方になります。これはIPAの試験要綱Ver.5.6(2026年10月の試験から適用)に反映済みで、出題範囲・出題数・試験時間に変更はありません。制度変更の詳細は「【2026年度版】情報処理安全確保支援士試験のCBT化で何が変わる?科目A/科目Bの新名称と対策の変え方」で解説しています。本記事では検索でたどり着きやすい「午前1」の呼称を主軸にしつつ、新名称を併記して進めます。
筆者はインフラエンジニアとして1999年から2005年ごろまでサーバーやルーターの設定・設計を担当し、その後、事業会社のCIOとしてIT投資の判断を行う立場になりました。エンジニアだった頃、決算書は経理部門が扱う別世界の書類でした。ところがCIOになると、投資の稟議は必ず金額と回収の話に着地します。導入したい機器の見積りを前にして、それが固定費として毎年乗るのか、何年で償却されるのか、この投資で営業利益はどう動くのか。この分野の用語は、そのとき実際に使った語彙です。試験のための計算に見えて、投資を通す側の言語でもあります。
本シリーズの全体戦略は導入記事「元CIOが実践するスタミナ温存術!「コスパ極振り」最短エスケープルート・完全版ロードマップ」に、前回のシステム戦略とシステム企画は「システム戦略とシステム企画を攻略!EA・BPR・RFIとRFPの頻出パターン完全ガイド」にまとめています。本記事は第14回、ストラテジ系(第3部)の4本目です。
この記事で学べること
- 貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の構造と読み方
- 5つの利益(売上総利益から当期純利益まで)の並びと計算手順
- ROE・ROA・自己資本比率・流動比率といった財務指標の意味と計算式
- 先入先出法・移動平均法・総平均法による棚卸資産評価の解法手順
- 定額法と定率法による減価償却費の計算
- 変動費率・限界利益・損益分岐点売上高・安全余裕率の公式と使い分け
- 線形計画法、待ち行列理論(M/M/1)、EOQ(経済的発注量)の計算パターン
- 期待値・デシジョンツリー・ゲーム理論による意思決定
- QC七つ道具・新QC七つ道具とIEの手法
- 組織形態、CIOなどの役職、コーポレートガバナンスとCSR
午前1の企業活動は公式の当てはめで取る分野
まず、どこに時間を使い、どこを捨てるかを決めます。この分野は範囲が広い一方で、出題される計算の型はごく限られています。
出題数は少なくても計算問題として現れやすい
午前1は30問出題され、100点満点中60点以上で通過します。18問取れれば合格ラインです。分野ごとの出題数はIPAが公表していませんが、過去問の傾向を見る限り、ストラテジ系は8問前後で、そのうち企業活動に割かれるのは1問から2問というのが実感です。
数としては多くありません。しかし、この1問から2問は「計算問題として出る確率が高い」という特徴があります。用語問題であれば知らなければ捨てられますが、計算問題は公式さえ持っていればほぼ確実に取れます。逆に言えば、公式を1つも持たずに試験会場へ行くと、解けたはずの1問を落とします。
しかも、企業活動で問われる公式は片手で数えられる程度です。損益分岐点、EOQ、待ち行列の利用率、期待値。この4つを覚えるだけで、計算問題の大半に手が届きます。学習時間あたりの得点効率は、ストラテジ系の中でもかなり高い部類です。
取る問題は損益分岐点・在庫評価・待ち行列・期待値
優先して押さえるのは次の4つです。
1つ目は損益分岐点分析です。 この分野の最頻出テーマで、変動費率と固定費から損益分岐点売上高を求める形が定番です。数字を変えた同型の問題が繰り返し現れます。
2つ目は棚卸資産の評価です。 先入先出法と移動平均法で売上原価や期末在庫額を計算させる形です。手順どおりに表を埋めれば必ず正解にたどり着きます。
3つ目は待ち行列理論(M/M/1)です。 利用率から平均待ち時間を求める形で、応答時間の見積りという文脈で出ます。式が1本なので取りこぼしたくない問題です。
4つ目は期待値による意思決定です。 複数案の期待値を計算して比較する形で、四則演算だけで解けます。
捨てる問題は個別の会計処理と統計の深い部分
逆に、時間をかけない領域も決めます。税効果会計や連結会計といった個別の会計処理、リース会計の判定基準、標準原価計算の差異分析の細部、確率分布の理論的な性質などは、覚える量に対して出題頻度が見合いません。
線形計画法についても、シンプレックス法の計算手順を手で追う練習は不要です。午前1で問われるのは、制約条件のグラフを描いて頂点を比べる程度か、そもそも「線形計画法とは何か」という用語の説明です。
また、アローダイアグラム(PERT)による日程計算やクリティカルパスは、本シリーズでは第8回のプロジェクトマネジメントで扱っています。企業活動の章でも在庫や生産計画の文脈で名前が出ますが、計算そのものは「プロジェクトマネジメントを攻略!EVMとアローダイアグラムの計算パターン完全ガイド」を参照してください。内部統制とその評価も第10回のシステム監査で扱っています。
計算問題のつまずきは単位と定義のずれ
新卒エンジニアにインフラを教えていた頃、計算問題を落とす人には共通の型がありました。式は合っているのに、単位が揃っていないのです。ネットワークの伝送時間でビットとバイトを取り違えるのと同じことが、会計の計算でも起きます。
企業活動の計算で特に注意すべき単位・定義のずれは3つです。
- 金額の単位:問題文が千円単位、選択肢が百万円単位、というずれ。計算前に単位を1つに揃えてから始めます
- 率と額:変動費率(比率)と変動費(金額)、限界利益率と限界利益。「率」の1文字を見落とすと答えが桁違いになります
- 期間:待ち行列やEOQの問題では、到着率が「1秒あたり」なのか「1時間あたり」なのか、保管費が「年間」なのか「月間」なのかが混在します
もう1つ、SC試験の受験者が引っかかりやすいのが「利益」の種類です。損益計算書には利益が5つ並びます。問題文が営業利益を聞いているのに経常利益を答えてしまう、というミスは計算力とは無関係に起こります。式を書く前に、問題文の「何を求めるか」に印を付ける習慣を付けると事故が減ります。
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企業会計と財務諸表の読み方
ここからは頻出テーマを順に整理します。まずは財務諸表です。3つの表の役割を分けて覚えます。
貸借対照表は「調達と運用」を左右で並べた表
貸借対照表(B/S:Balance Sheet)は、決算日という一時点における企業の財政状態を表す表です。左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と純資産が並び、左右の合計が必ず一致します。
右側は「お金をどこから調達したか」を表します。負債は返済義務のある他人資本、純資産は返済義務のない自己資本です。左側は「調達したお金を何に変えて持っているか」という運用の姿です。この左右の関係を押さえると、財務指標の意味が一気に通ります。
資産と負債はさらに分かれます。
- 流動資産:1年以内に現金化される見込みの資産。現金預金、売掛金、受取手形、棚卸資産(商品・製品・仕掛品・原材料)など
- 固定資産:長期にわたって保有・使用する資産。建物、機械装置、土地といった有形固定資産と、ソフトウェアや特許権といった無形固定資産、投資その他の資産に分かれます
- 流動負債:1年以内に支払期限が来る負債。買掛金、支払手形、短期借入金など
- 固定負債:支払期限が1年を超える負債。長期借入金、社債など
- 純資産:資本金、資本剰余金、利益剰余金など。株主が拠出した部分と、稼いで内部に留保した部分から成ります(厳密には純資産には新株予約権や非支配株主持分も含まれますが、午前1では純資産=自己資本として扱われます)
流動と固定を分ける基準が「1年以内かどうか」である点(ワンイヤールール)は、そのまま問われることがあります。なお、企業が自社で開発したソフトウェアや購入したパッケージのうち、資産計上した分は無形固定資産として計上され、後述する減価償却の対象になります。IT投資が財務諸表のどこに現れるかという視点は、SC試験の受験者にとって理解しやすい入口です。

損益計算書は5つの利益が段階的に並ぶ
損益計算書(P/L:Profit and Loss statement)は、一定期間(通常は1年)の経営成績を表す表です。売上高から費用を段階的に差し引いていき、5つの利益を順に算出します。この並びが最も出題されます。
- 売上総利益 = 売上高 - 売上原価(いわゆる粗利)
- 営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費(本業の儲け)
- 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用(財務活動を含む通常の儲け)
- 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
- 当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税、住民税及び事業税
数値例で確認します。単位は百万円とします。
| 項目 | 金額 | 段階の利益 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000 | |
| 売上原価 | 600 | 売上総利益 400 |
| 販売費及び一般管理費 | 250 | 営業利益 150 |
| 営業外収益(受取利息など) | 20 | |
| 営業外費用(支払利息など) | 50 | 経常利益 120 |
| 特別損失(固定資産売却損など) | 30 | 税引前当期純利益 90 |
| 法人税等 | 30 | 当期純利益 60 |
覚え方は「本業 → 財務を含む通常 → 臨時 → 税引後」という段階です。受取利息や支払利息は本業ではないので営業外、災害損失や固定資産の売却損益のように臨時かつ多額のものは特別損益。この分類が問われます。
学び始めの人が最も混同するのが、営業利益と経常利益です。「借入金の利息を差し引いた後が経常利益」と覚えると区別できます。借入で調達したかどうかは本業の実力とは別、という考え方が背景にあります。

キャッシュフロー計算書は3区分に分けて読む
キャッシュフロー計算書(C/F:Cash Flow statement)は、一会計期間の現金及び現金同等物の増減を、活動区分ごとに表した書類です。損益計算書の利益は発生主義で計算されるため、利益が出ていても手元に現金がない状態(黒字倒産)が起こり得ます。それを可視化するのがこの表です。
- 営業活動によるキャッシュフロー:本業による現金の増減。通常はプラスであることが健全とされます
- 投資活動によるキャッシュフロー:固定資産や有価証券の取得・売却による増減。設備投資を行えばマイナスになります
- 財務活動によるキャッシュフロー:借入や返済、増資、配当による増減
フリーキャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを合計したもので、企業が自由に使える資金の目安として使われます。
出題では「営業CFがプラスで投資CFがマイナス、財務CFがマイナス」といった符号の組み合わせから企業の状況を読ませる形が出ます。本業で稼ぎ、設備に投資し、借入を返している状態、という読み方です。
財務指標は分母が何かで意味が決まる
財務指標は数が多いので、「何を何で割っているか」だけを押さえます。
| 指標 | 計算式 | 何を測るか |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資本 × 100 | 資金調達の安全性。高いほど返済義務のない資金の割合が大きい |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 短期の支払能力。200%以上が目安とされる |
| 当座比率 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 | 流動比率より厳しい支払能力。棚卸資産を除く |
| ROE(自己資本利益率:Return On Equity) | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 株主が出したお金でどれだけ稼いだか |
| ROA(総資産利益率:Return On Assets) | 利益 ÷ 総資産 × 100 | 資産全体をどれだけ効率よく使ったか |
| ROI(投資利益率:Return On Investment) | 利益 ÷ 投資額 × 100 | 個別の投資案件の採算 |
| 総資本回転率 | 売上高 ÷ 総資本 | 資本が1年で何回売上に変わったか(単位は回) |
| 売上高営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 | 本業の収益力 |
| 労働生産性 | 付加価値 ÷ 従業員数 | 従業員1人あたりの付加価値 |
ROEとROAの違いは頻出です。「ROEは自己資本が分母、ROAは総資産(総資本)が分母」。借入を増やすと総資産が膨らむのでROAは下がりますが、自己資本は変わらないため、当期純利益が同じであればROEは変わりません。借り入れた資金が利益を生めばレバレッジ効果でROEは上昇し、逆に支払利息の増加で当期純利益が減ればROEも下がります。この性質から、ROEだけを見ると財務レバレッジの高い企業が良く見える、という論点につながります。
もう1つ、ROI(Return On Investment:投資利益率)も併せて押さえます。ROEとROAが会社全体の収益力を測るのに対し、ROIは「個別の投資案件が採算に合ったか」を測る指標で、分母は投資額です。セキュリティ製品の導入やシステム更改の是非を判断する場面で使われ、投資額に対してどれだけの利益や損失回避効果が得られたかを表します。3つはいずれも Return On ~(~に対する利益)で、違いは分母だけです。ROEは自己資本、ROAは総資産、ROIは投資額。ここを取り違えないようにしてください。
当座比率の当座資産は、流動資産のうち現金預金、売掛金、受取手形、有価証券など、すぐ現金化できるものを指します。棚卸資産は売れなければ現金にならないため除外する、という発想です。流動比率と当座比率の違いを問う問題では、この「棚卸資産を含むか含まないか」が答えの分かれ目になります。
原価計算・棚卸資産の評価・減価償却
計算問題の第2グループです。ここは手順どおりに表を埋めれば確実に取れます。
費用の分類は3つの軸で整理する
原価に関する用語は、分類の軸ごとに整理すると混乱しません。
軸1:操業度との関係(固変分解)
- 変動費:売上や生産量に比例して増減する費用。材料費、外注費、販売手数料など
- 固定費:売上や生産量に関係なく一定額かかる費用。減価償却費、地代家賃、正社員の人件費など
軸2:製品との対応関係
- 直接費:特定の製品に直接ひも付けられる費用(直接材料費、直接労務費、直接経費)
- 間接費:複数の製品に共通して発生し、直接ひも付けられない費用。一定の基準で各製品に配賦します
軸3:形態別分類
- 製造原価の3要素として材料費・労務費・経費があります
変動費と固定費の分け方は、次の損益分岐点分析の前提になります。「減価償却費は固定費」という点は、そのまま出題されることがあるので押さえておきます。設備を導入した瞬間から、稼働率にかかわらず毎期の費用として乗り続けるためです。
棚卸資産の評価は先入先出法と移動平均法が本命
同じ商品を異なる単価で仕入れた場合、払い出した分の原価(売上原価)と残った分の金額(期末棚卸高)をどう割り振るかを決める必要があります。その方法が棚卸資産の評価方法です。
- 個別法:個々の資産の実際の取得原価で評価する方法
- 先入先出法(FIFO:First-In First-Out):先に仕入れたものから先に払い出されると仮定する方法
- 移動平均法:仕入のたびに、その時点の在庫金額と仕入金額を合計して平均単価を計算し直す方法
- 総平均法:期首棚卸高と一定期間の仕入高の合計を、期首数量と仕入数量の合計で割り、期間全体で1つの平均単価を使う方法
- 売価還元法:売価に原価率を乗じて期末棚卸高を算定する方法。取扱品目が多い小売業などで用いられます
なお、後入先出法(LIFO)は、後から仕入れたものを先に払い出すと仮定する方法として長く教科書に載っていましたが、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」の2008年の改正により、2010年4月1日以後開始する事業年度から廃止されています。現行の日本基準で認められるのは個別法・先入先出法・平均原価法・売価還元法です。用語として知っておく価値はありますが、現行制度で選べる方法として扱わないよう注意してください。
具体例で計算します。ある商品の1か月の受払いが次のとおりだったとします。
| 日付 | 区分 | 数量 | 単価 |
|---|---|---|---|
| 1日 | 前月繰越 | 100個 | 200円 |
| 5日 | 仕入 | 200個 | 260円 |
| 10日 | 払出 | 150個 | |
| 20日 | 仕入 | 100個 | 300円 |
| 25日 | 払出 | 150個 |
期首在庫と仕入を合わせた総額(販売可能額)は 100×200 + 200×260 + 100×300 = 20,000 + 52,000 + 30,000 = 102,000円、期末在庫数量は 100 + 200 - 150 + 100 - 150 = 100個です。
先入先出法の場合
10日の払出150個は、古い順に前月繰越100個(@200)と5日仕入50個(@260)から充当します。原価は 100×200 + 50×260 = 33,000円。残るのは5日仕入の150個(@260)です。
20日に100個(@300)を仕入れた後、25日の払出150個は古い順に5日仕入の150個(@260)から充当します。原価は 150×260 = 39,000円。
期末在庫は20日仕入の100個(@300)で 30,000円、売上原価は 33,000 + 39,000 = 72,000円です。総額102,000円から期末在庫30,000円を引いた額と一致します。
移動平均法の場合
5日の仕入直後、在庫は300個・72,000円なので平均単価は 72,000 ÷ 300 = 240円。10日の払出150個の原価は 150×240 = 36,000円で、残高は150個・36,000円です。
20日の仕入直後、在庫は250個・66,000円(36,000 + 30,000)なので平均単価は 66,000 ÷ 250 = 264円。25日の払出150個の原価は 150×264 = 39,600円。
期末在庫は100個・26,400円、売上原価は 36,000 + 39,600 = 75,600円です。
総平均法の場合
期間全体の平均単価は 102,000 ÷ 400個 = 255円。期末在庫は 100×255 = 25,500円、売上原価は 300×255 = 76,500円です。
3つの結果を並べると、仕入単価が上昇している局面では、先入先出法の期末在庫額が最も大きく、売上原価が最も小さくなります。売上原価が小さいということは、その分だけ利益が大きく計上されるということです。「価格上昇局面では先入先出法のほうが利益が大きく出る」という結論は、選択肢の判定に直接使えます。

減価償却は定額法と定率法の2つだけ押さえる
減価償却は、建物や機械、ソフトウェアといった長期に使用する固定資産の取得価額を、使用可能な期間(耐用年数)にわたって費用として配分する手続きです。土地は時の経過で価値が減らないため、減価償却の対象になりません。ここは引っかけとして使われます。
定額法は、毎期同額を償却する方法です。
年間の減価償却費 =(取得価額 - 残存価額)÷ 耐用年数
取得価額600万円、耐用年数5年、残存価額0円のサーバーであれば、毎年 600 ÷ 5 = 120万円が減価償却費になります。
定率法は、未償却残高(帳簿価額)に一定の償却率を掛けて償却する方法です。
各期の減価償却費 = 未償却残高 × 償却率
同じ資産で償却率0.4とすると、1年目は 600×0.4 = 240万円、2年目は残高360万円に対して 360×0.4 = 144万円、3年目は残高216万円に対して 216×0.4 = 86.4万円となります。
両者の違いは「初期に多く償却するのが定率法、毎期一定が定額法」です。耐用年数の全期間を通した償却総額は同じですが、各期の費用計上額が変わるため、単年度の利益は変わります。IT機器のように陳腐化の速い資産で定率法が選ばれることがあるのは、この性質のためです。
なお、リースによって設備を利用する場合は、資産計上して減価償却する形と、期間の費用として処理する形があります。午前1では詳細な判定基準までは問われないので、「所有と利用を分ける手段」という位置づけを持っておけば十分です。
損益分岐点分析はこの分野の最頻出テーマ
企業活動で最も出る計算がここです。使う式は実質1本なので、確実に得点源にします。
変動費率と限界利益から出発する
損益分岐点(BEP:Break-Even Point)は、売上高と総費用が一致して利益がゼロになる点です。ここを超えれば黒字、下回れば赤字になります。
前提として、費用を変動費と固定費に分けます(固変分解)。そのうえで次の3つを定義します。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
限界利益 = 売上高 - 変動費
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 = 1 - 変動費率
限界利益は、売上から変動費だけを引いた額で、売上が増えたときにその増加分のうち固定費の回収と利益に回る部分を表します(英語ではcontribution margin。日本語の「貢献利益」は限界利益からさらに個別固定費を引いた額を指す用法もあるため、同義とは限りません)。この限界利益が固定費を回収し、回収しきった先が営業利益になります。
営業利益 = 限界利益 - 固定費
損益分岐点売上高の公式と計算手順
営業利益がゼロ、すなわち限界利益と固定費が等しくなる売上高が損益分岐点売上高です。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)
数値例です。売上高1,000万円、変動費600万円、固定費300万円の事業があるとします。
- 変動費率 = 600 ÷ 1,000 = 0.6
- 限界利益率 = 1 - 0.6 = 0.4
- 損益分岐点売上高 = 300 ÷ 0.4 = 750万円
検算します。売上高750万円のとき、変動費は 750×0.6 = 450万円、限界利益は300万円、固定費300万円を引いて営業利益は0円。確かに損益分岐点です。
現状の営業利益も確認しておきます。限界利益は 1,000 - 600 = 400万円、固定費300万円を引いて営業利益は100万円です。
目標利益を織り込む場合は、固定費に目標利益を足すだけです。
目標利益達成売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率
目標営業利益を200万円とすると、(300 + 200)÷ 0.4 = 1,250万円の売上が必要になります。
固定費を削減した場合も同じ式です。固定費を50万円削減して250万円にすると、損益分岐点売上高は 250 ÷ 0.4 = 625万円まで下がります。固定費の削減が損益分岐点をどれだけ押し下げるかを問う形は、出題の定番です。

安全余裕率と損益分岐点比率で余力を測る
損益分岐点に関連する指標も一緒に押さえます。
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
安全余裕率 =(実際の売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高 × 100 = 100 - 損益分岐点比率
先ほどの例では、損益分岐点比率は 750 ÷ 1,000 = 75%、安全余裕率は25%です。売上が25%落ちるまでは赤字にならない、という読み方をします。
「損益分岐点比率は低いほど良く、安全余裕率は高いほど良い」という向きを覚えてください。2つは足すと100%になる裏返しの関係なので、どちらか一方の意味を持っていれば導けます。
学び始めの人がよく間違えるのは、限界利益率と変動費率の取り違えです。固定費を割る相手は限界利益率であって変動費率ではありません。先ほどの例で誤って 300 ÷ 0.6 = 500万円としてしまうと、選択肢にそれらしい数字が用意されていて引っかかります。式を書き出すときは、必ず「1 -」を明示的に書く癖を付けると防げます。
もう1つ、固定費と変動費の判定も問われます。CIO時代にWAFの導入を見送った理由の1つも、まさにここにありました。製品そのものが高価なうえに運用の負荷も重く、「毎年のコストとして乗り続ける」点が損益分岐点を押し上げると判断したからです。結局、Webサーバー側のアクセス制御設定を工夫して守る道を選びましたが、その判断は技術の議論であると同時に、この分野の計算そのものでした。
OR:意思決定を数値で支える手法群
OR(Operations Research:オペレーションズリサーチ)は、業務上の問題を数理的なモデルに置き換えて、最適な意思決定を導く手法の総称です。午前1で出るものに絞って整理します。
線形計画法は制約条件の中で目的関数を最大化する
線形計画法(LP:Linear Programming)は、複数の1次式で表された制約条件のもとで、1次式の目的関数(利益や費用)を最大化または最小化する解を求める手法です。限られた資源をどの製品にどう配分するか、という配分問題に使われます。
数値例です。製品Xと製品Yを製造しており、1個あたりの利益は製品Xが400円、製品Yが300円。機械Aの使用時間は製品Xが2時間、製品Yが1時間で、月間の稼働可能時間は80時間。機械Bの使用時間は製品Xが1時間、製品Yが3時間で、月間の稼働可能時間は90時間。利益を最大にする生産量を求めます。
製品Xの生産量をx、製品Yの生産量をyとすると、
目的関数:利益 = 400x + 300y を最大化
制約条件:2x + y ≦ 80(機械A)、x + 3y ≦ 90(機械B)、x ≧ 0、y ≧ 0
制約条件を満たす領域(実行可能領域)の頂点を調べます。
- (x, y) = (0, 0) のとき利益 0円
- (x, y) = (40, 0) のとき利益 16,000円
- (x, y) = (0, 30) のとき利益 9,000円
- 2つの制約式が同時に等号となる交点:2x + y = 80 と x + 3y = 90 を連立して (x, y) = (30, 20)。利益は 400×30 + 300×20 = 18,000円
最大は (30, 20) のときの18,000円です。線形計画問題の最適解は必ず実行可能領域の頂点のいずれかに現れるため、「頂点を全部計算して比べる」だけで答えが出ます。午前1のレベルであれば、この手順で十分です。
待ち行列理論(M/M/1)は利用率が主役
待ち行列理論は、サービスを受けるために並ぶ行列の長さや待ち時間を確率的に分析する手法です。試験で扱われるのはほぼM/M/1モデル(到着がポアソン分布、サービス時間が指数分布、窓口が1つ)です。
記号を整理します。
- λ(ラムダ):単位時間あたりの平均到着率(件/秒など)
- Ts:1件あたりの平均サービス時間
- ρ(ロー):利用率(窓口の混雑度)
利用率 ρ = λ × Ts
平均待ち時間 Tw = ρ ÷(1 - ρ)× Ts
平均応答時間(滞留時間)= Tw + Ts = Ts ÷(1 - ρ)
数値例です。あるサーバーへのリクエストが平均で毎秒3件到着し、1件あたりの平均処理時間が0.2秒だとします。
- 利用率 ρ = 3 × 0.2 = 0.6
- 平均待ち時間 Tw = 0.6 ÷ 0.4 × 0.2 = 0.3秒
- 平均応答時間 = 0.3 + 0.2 = 0.5秒(= 0.2 ÷ 0.4)
ここで到着が増えて毎秒4件になると、ρ = 4 × 0.2 = 0.8。平均待ち時間は 0.8 ÷ 0.2 × 0.2 = 0.8秒、平均応答時間は1.0秒です。到着率が3分の4倍になっただけで、待ち時間は約2.7倍に膨らみました。
この非線形な増え方こそが待ち行列理論の要点です。「利用率が1に近づくと待ち時間は発散する」。だから設計では利用率に余裕を持たせます。インフラエンジニアとしてサーバーのサイジングをしていた頃、CPU使用率を100%近くまで使い切る設計にしない理由は感覚として知っていましたが、その感覚を式にしたものがこのモデルです。
SC試験の文脈では、DoS攻撃で到着率が跳ね上がるとサービスが応答不能になる仕組み、あるいは認証サーバーの処理性能とアクセス集中の関係を説明する土台になります。

在庫管理とEOQ(経済的発注量)
在庫は、多く持てば保管費がかさみ、少なく持てば発注回数が増えて発注費がかさみます。この2つの合計が最小になる1回あたりの発注量がEOQ(Economic Order Quantity:経済的発注量)です。
EOQ = √(2 × 年間需要量 × 1回あたりの発注費用 ÷ 1個あたりの年間在庫保管費用)
数値例です。年間需要量3,600個、1回あたりの発注費用2,000円、1個あたりの年間在庫保管費用40円とします。
EOQ = √(2 × 3,600 × 2,000 ÷ 40)= √(14,400,000 ÷ 40)= √360,000 = 600個
1回600個ずつ発注すると、年間の発注回数は 3,600 ÷ 600 = 6回になります。
発注方式そのものも用語として問われます。
- 定量発注方式:在庫量があらかじめ定めた水準(発注点)まで減ったら、決まった量を発注する方式。発注量は一定、発注のタイミングは不定。単価が安く需要が安定した品目に向きます
- 定期発注方式:あらかじめ定めた周期ごとに、需要予測に基づいて発注量を計算して発注する方式。発注のタイミングは一定、発注量は不定。単価が高く需要変動の大きい重要品目に向きます
「量が一定なのが定量発注、期間が一定なのが定期発注」と、名前どおりに対応させれば迷いません。
在庫の分析手法としてABC分析も頻出です。品目を金額の大きい順に並べ、累積構成比によってA・B・Cのグループに分け、重点管理する対象を絞る方法です。後述するパレート図を使って可視化します。
意思決定:期待値・デシジョンツリー・ゲーム理論
不確実性のもとでの意思決定も出題されます。
期待値は、起こり得る結果の値に、その発生確率を掛けて合計したものです。
数値例です。新規事業の案が2つあります。
- 案A:成功確率60%で利益5,000万円、失敗確率40%で損失1,000万円
- 案B:成功確率90%で利益3,000万円、失敗確率10%で利益0円
案Aの期待値 = 0.6 × 5,000 + 0.4 × (-1,000) = 3,000 - 400 = 2,600万円 案Bの期待値 = 0.9 × 3,000 + 0.1 × 0 = 2,700万円
期待値だけで比べれば案Bが有利です。成功時の金額が大きい案Aに目が行きがちですが、失敗時の損失と確率まで含めて評価するのが期待値の考え方です。
デシジョンツリー(決定木)は、意思決定の分岐(意思決定ノード)と、確率的に分かれる状態(機会ノード)を樹形図で表し、末端から期待値を計算して逆にたどることで最適な選択を導く手法です。段階的な意思決定を可視化できるのが特徴で、リスク分析でも使われます。
ゲーム理論は、複数の意思決定主体が互いに影響を及ぼし合う状況をモデル化する理論です。午前1で問われるのは主に、利得表から最適戦略を選ぶ基準です。次に挙げる4つのうち、最初の3つは厳密にはゲーム理論そのものではなく、結果の確率が分からない状況で使う不確実性下の意思決定基準で、ゲーム理論の概念は最後のナッシュ均衡です。両者は併せて出題されます。
- マクシミン原理(マキシミン):各案の最悪の結果を比べ、その中で最も良い案を選ぶ。悲観的・保守的な基準
- マクシマックス原理:各案の最良の結果を比べ、その中で最も良い案を選ぶ。楽観的な基準
- ミニマックス後悔(リグレット)原理:選ばなかったことによる後悔の最大値が最小になる案を選ぶ
- ナッシュ均衡:互いに相手の戦略を所与としたとき、どちらも戦略を変える動機を持たない状態
セキュリティ投資の意思決定は、まさにこの構造です。攻撃が来るかどうかは不確実で、対策には確実にコストがかかる。リスク移転として保険を掛けるか、リスク低減として対策製品を入れるかという判断は、期待損失額と対策費用の比較にほかなりません。SC試験のリスクマネジメントで学ぶ「年間予想損失額」の考え方と同じ土俵にあります。
IEと品質管理の手法
IE(Industrial Engineering:生産工学)は、作業や工程を分析して効率を高めるための手法体系です。品質管理の道具とセットで問われます。
QC七つ道具は数値データを扱う道具
QC七つ道具は、主に定量的なデータを分析するための7つの手法です。
- パレート図:項目を件数や金額の大きい順に棒グラフで並べ、累積構成比を折れ線で重ねた図。「重点管理すべき少数の項目」を見つける。ABC分析の基礎になります
- 特性要因図(フィッシュボーンチャート):結果(特性)に影響を与える要因を、魚の骨のような形で体系的に整理した図。原因の洗い出しに使います
- チェックシート:データを漏れなく簡単に記録・集計するための表
- ヒストグラム:測定値を区間ごとに区切り、度数を柱状に表した図。データのばらつきの分布を把握します
- 散布図:2つの項目を縦軸と横軸に取り、対応する点を打った図。2変数の相関関係を把握します
- 管理図:時系列のデータを打点し、上方管理限界線と下方管理限界線を引いた図。工程が安定した状態にあるかを判定します
- 層別:データを機械別、作業者別、時間帯別といった条件で分類し、傾向の違いを明らかにする考え方(グラフを7つ目に数える整理もあります)
出題で最も狙われるのは、パレート図・特性要因図・散布図・ヒストグラムの取り違えです。判別の軸を1つに絞ります。
| 知りたいこと | 使う図 |
|---|---|
| どの項目に重点を置くべきか | パレート図 |
| なぜその結果になったのか(原因の体系) | 特性要因図 |
| 2つの項目に関係があるか | 散布図 |
| データはどうばらついているか | ヒストグラム |
| 工程は安定しているか | 管理図 |

新QC七つ道具は言語データを扱う道具
新QC七つ道具は、数値化しにくい言語データを整理するための手法です。
- 親和図法:混沌とした言語データを、似たもの同士でグループ化して問題の構造を明らかにする(KJ法を基にした手法)
- 連関図法:複雑に絡み合う原因と結果の関係を、矢印で結んで整理する
- 系統図法:目的を達成する手段を段階的に展開し、樹形図として整理する
- マトリックス図法:2つの要素を行と列に配置し、交点で対応関係を整理する
- アローダイアグラム法:作業の順序と所要日数を矢印で表し、日程を計画する(PERT図)
- PDPC法(Process Decision Program Chart):計画が想定どおり進まない場合を織り込み、代替経路をあらかじめ描いておく手法
- マトリックスデータ解析法:数値データを多変量解析で整理する(新QC七つ道具で唯一、数値データを扱う手法)
「QC七つ道具は数値データ、新QC七つ道具は言語データ」という対比が基本です。ただしマトリックスデータ解析法だけは例外で数値を扱う、という点が引っかけに使われます。
特性要因図と連関図法の違いも問われます。特性要因図は1つの特性に対して要因を階層的に整理する図、連関図法は原因同士が相互に絡み合う関係を表す図です。
IEの作業分析と生産方式
IEの手法も名前と目的のセットで押さえます。
- ワークサンプリング法:作業者や機械の状態を、決まった時刻に瞬間的に何度も観測し、統計的に各作業の時間構成比を推定する方法。連続観測しないのが特徴です
- ストップウォッチ法(直接時間研究):実際の作業時間をストップウォッチで直接測定する方法
- PTS法(Predetermined Time Standard):作業を基本動作に分解し、あらかじめ定められた標準時間値を積み上げて標準時間を求める方法。実測を必要としません
生産方式に関する用語も、名前と意味の対応が問われます。
- JIT(Just In Time):必要なものを、必要なときに、必要なだけ生産・調達する方式。かんばん方式が代表例で、在庫の削減を狙います
- セル生産方式:1人または少人数で製品の組立てを一貫して担当する方式。多品種少量生産に向きます
- ライン生産方式:コンベアなどで流れる製品に対し、各工程の作業者が分担して作業する方式。少品種大量生産に向きます
- MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画):生産計画と部品構成表(BOM)、在庫状況から、必要な資材の量と時期を算出する仕組み
- FMS(Flexible Manufacturing System):多品種少量生産に柔軟に対応できる自動化された生産システム
企業統治と組織形態
最後に、用語問題として出る組織と統治のテーマを整理します。
組織形態は指揮命令系統の形で覚える
- 職能別組織(機能別組織):営業、製造、経理といった職能ごとに部門を編成する形。専門性は高まりますが、部門間の調整に負荷がかかります
- 事業部制組織:製品別、地域別、顧客別といった単位で事業部を編成し、各事業部に大きな権限を委譲する形。事業部が利益責任を負うプロフィットセンターとなり、意思決定が速くなる一方、事業部間で機能が重複しやすくなります
- マトリックス組織:職能別の軸とプロジェクト(製品)別の軸を組み合わせ、1人の従業員が2つの指揮命令系統に属する形。資源を柔軟に使える反面、命令の一元性が崩れるため指示の衝突が起こりやすくなります
- プロジェクト組織:特定の目的のために各部門から人を集めて編成し、目的達成後に解散する組織
- カンパニー制:事業部制をさらに進め、社内の各事業を独立した会社に見立てて権限と責任を持たせる形
- 社内ベンチャー組織:新規事業を育てるために、社内に独立性の高い組織を設ける形
- 持株会社(ホールディングカンパニー):他社の株式を保有して支配することを主目的とする会社
マトリックス組織の出題は「2つの指揮命令系統」という特徴で判別できます。事業部制と混同する選択肢が定番なので、「1人が2人の上司を持つ形かどうか」で切り分けてください。
CIOをはじめとする役職の役割
経営層の役職も、担当領域の対応が問われます。
- CEO(Chief Executive Officer):最高経営責任者
- COO(Chief Operating Officer):最高執行責任者
- CFO(Chief Financial Officer):最高財務責任者
- CIO(Chief Information Officer):最高情報責任者。情報化の戦略立案とIT投資の意思決定に責任を持つ
- CTO(Chief Technology Officer):最高技術責任者
- CISO(Chief Information Security Officer):最高情報セキュリティ責任者。情報セキュリティの統括に責任を持つ
CIOとCISOの違いは、SC試験では特に重要です。CIOは情報システム全体の活用と投資、CISOは情報セキュリティの統括。両者を兼任する組織も多いのですが、「利便性の推進役と、統制の担い手を同じ人に持たせると牽制が効かない」という論点があります。ここは午後の組織体制を問う設問でも背景知識として効きます。
コーポレートガバナンスとCSR
- コーポレートガバナンス(企業統治):経営者が株主をはじめとするステークホルダーの利益のために適切に経営を行っているかを、監視・規律する仕組み。社外取締役や監査役会の設置、情報開示などが手段になります
- 内部統制:業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令等の遵守、資産の保全という4つの目的の達成を合理的に保証するために、業務に組み込まれるプロセス。詳細は「システム監査を攻略!内部統制・監査手続・システム管理基準の頻出パターン完全ガイド」で扱っています
- コンプライアンス:法令や社会規範、企業倫理の遵守
- CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任):利益追求だけでなく、環境、人権、労働、地域社会といった側面で企業が果たすべき責任
- CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造):社会課題の解決を事業機会と捉え、社会価値と経済価値を同時に生み出す考え方
- SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標):国連が2015年に採択した2030年までの国際目標
- ESG投資:環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への取り組みを評価して投資先を選ぶ手法
- ディスクロージャー:投資家などに向けて企業情報を適時・適切に開示すること。IR(Investor Relations)は投資家向けの広報活動
コーポレートガバナンスと内部統制の関係は問われることがあります。「ガバナンスは経営者を監視する仕組み、内部統制は経営者が構築する業務の仕組み」という方向の違いで整理してください。監視する側と、監視される側が作る側、という視点の差です。
SC試験の観点では、これらの用語は午後の設問で提示される組織の前提として現れます。権限の分離、承認フローの文書化、証跡の保存。内部統制として求められる基本動作は、そのままセキュリティ統制の設計と重なります。用語を暗記するだけでなく、「誰が誰を牽制しているのか」という関係で捉えると、午後の読解でも使える道具になります。
午前1で狙われる混同ペア総まとめ
この分野の失点は、公式の取り違えと用語の入れ替えでほぼ説明できます。誤りの形と正しい形を対にして整理します。
| 誤りの表現(選択肢に出る形) | 正しい表現・考え方 |
|---|---|
| 経常利益は本業の儲けを表す | 本業の儲けは営業利益。経常利益は営業外損益を加減した後 |
| 受取利息は特別利益に計上する | 経常的に発生するので営業外収益 |
| ROEは総資産に対する利益率 | ROEの分母は自己資本。総資産が分母なのはROA |
| ROIは会社全体の収益力を測る指標 | ROIの分母は投資額で、測るのは個別の投資案件の採算。会社全体を測るのはROE(分母は自己資本)とROA(分母は総資産) |
| 当座比率は棚卸資産を含めて計算する | 当座資産に棚卸資産は含めない。含めるのは流動比率 |
| 後入先出法は現行の日本基準で選択できる | 2010年4月1日以後開始する事業年度から廃止されている |
| 価格上昇局面では先入先出法のほうが利益が小さくなる | 逆。売上原価が小さくなるため利益は大きくなる |
| 土地も耐用年数に応じて減価償却する | 土地は時の経過で価値が減らないため償却しない |
| 定額法は初期に多く償却する | 初期に多いのは定率法。定額法は毎期同額 |
| 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 変動費率 | 割る相手は限界利益率(= 1 - 変動費率) |
| 限界利益は売上高から固定費を引いた額 | 引くのは変動費。限界利益 - 固定費 = 営業利益 |
| 安全余裕率は低いほど経営が安定している | 高いほど安定。低いほど良いのは損益分岐点比率 |
| 減価償却費は変動費に分類される | 生産量に関係なく発生するので固定費 |
| 待ち行列の利用率は 到着率 ÷ サービス時間 | ρ = 到着率 × 平均サービス時間 |
| M/M/1では利用率が上がっても待ち時間は比例して増える | 利用率が1に近づくと急激に発散する(非線形) |
| 定量発注方式は一定の周期で発注する | 周期が一定なのは定期発注方式。定量は発注量が一定 |
| EOQは在庫保管費だけを最小にする発注量 | 発注費用と保管費用の合計が最小になる量 |
| マクシミン原理は最良の結果が最大の案を選ぶ | それはマクシマックス。マクシミンは最悪の中で最良 |
| ヒストグラムは2つの項目の相関を見る図 | 相関は散布図。ヒストグラムはばらつきの分布 |
| 特性要因図は項目を件数の多い順に並べる図 | それはパレート図。特性要因図は原因の体系整理 |
| 新QC七つ道具はすべて言語データを扱う | マトリックスデータ解析法だけは数値データを扱う |
| ワークサンプリング法は作業を連続観測する | 決まった時刻に瞬間的に観測して統計的に推定する |
| マトリックス組織は事業部ごとに権限を委譲する形 | それは事業部制組織。マトリックスは2つの指揮命令系統 |
| CISOは情報化戦略とIT投資に責任を持つ | それはCIO。CISOは情報セキュリティの統括 |
この表は、そのまま選択肢の切り捨て基準として使えます。企業活動の問題を見たら、まず「率と額を取り違えていないか」「隣の用語の説明ではないか」を疑うのが最短経路です。
SC試験での出題パターンと対策
最後に、この分野がSC試験の中でどう出るかを整理します。
午前1で繰り返される3つの型
型1:公式に数値を当てはめる計算問題。 損益分岐点売上高、EOQ、待ち行列の平均待ち時間、期待値。問題文から必要な数値を拾い、式に入れるだけで答えが出ます。選択肢には、変動費率で割ってしまった値や、待ち時間とサービス時間を足し忘れた値といった「典型的な計算ミスの結果」が並びます。自分の答えが選択肢にあったからといって安心せず、式の形を1度確認してください。
型2:表を埋める計算問題。 棚卸資産の評価や、損益計算書の各段階の利益を求める形です。受払いの表を時系列で埋めていけば必ず解けます。焦って暗算せず、余白に小さな表を書くほうが速く確実です。
型3:用語の定義を問う問題。 QC七つ道具、組織形態、発注方式、財務指標。選択肢には必ず隣の用語の説明が混ざります。混同ペアの表を持っていれば即答できます。
企業活動は、午前1で繰り返し出題されている定番テーマです。数値だけを変えた同型の問題が形を保ったまま現れるため、過去問を数年分回すだけで得点が安定します。
午前2・午後との接続
企業活動の考え方は、SC試験の本体でも形を変えて現れます。
セキュリティ投資の判断は期待値の計算です。 リスクの大きさは、発生確率と影響額の積で見積もります。年間予想損失額(ALE)と対策費用を比べて投資判断を行うという枠組みは、本記事の期待値による意思決定そのものです。「対策コストがリスク低減額を上回る場合はリスク保有を選ぶ」という結論も、この計算から出てきます。
可用性設計は待ち行列の発想です。 DoS攻撃で到着率が跳ね上がるとなぜ応答不能になるのか。利用率が1に近づいたときの発散を知っていれば、レートリミットや流量制御が対策として並ぶ理由が腹落ちします。
固定費と変動費の区別はクラウド移行の論点です。 オンプレミスの設備投資は固定費として減価償却され、クラウドの従量課金は変動費として発生します。損益分岐点の位置が変わるという意味で、この選択は財務的な判断でもあります。
委託先やサプライチェーンの評価にはCSRの視点が入ります。 調達基準に社会的責任やセキュリティ要件を組み込む考え方は、前回扱ったCSR調達の延長線上にあります。
組織体制の設問ではCISOとCIOの分離が問われます。 誰が最終的にセキュリティの意思決定をするのか、その責任者は推進側から独立しているのか。午後の設問で組織図が提示されたとき、この観点で読むと問われている論点が見えます。
【演習】企業活動の計算パターン理解度チェック(全10問)
午前1の企業活動は、公式に数値を当てはめる計算問題、受払表や損益計算書を埋める計算問題、用語の定義を問う問題という3つの型が出題の中心です。定番の引っかけは、損益分岐点売上高を変動費率で割ってしまう誤り、ROEとROAの分母の取り違え、待ち行列で平均待ち時間と平均応答時間を混同するもの、そしてパレート図と特性要因図の入れ替えです。以下の練習問題で本記事の理解度を確認してみましょう。
まとめ:企業活動は数式を4つ持てば戦える分野
午前1の企業活動は、範囲の広さに比べて出題される計算の型が限られた分野です。損益分岐点売上高、EOQ、待ち行列の利用率と待ち時間、期待値。この4つの式と、財務諸表の構造、棚卸資産の評価手順を持っていれば、出題の大半に手が届きます。用語問題は混同ペアの表で切り捨てる。この2本立てで十分に戦えます。
失点の原因は、ほとんどが計算力ではなく定義の取り違えです。率と額、営業利益と経常利益、ROEとROA、待ち時間と応答時間。どれも1文字か2文字の差で、選択肢にはその誤りの結果がきちんと用意されています。式を書き出してから数字を入れる、という順序を守るだけで事故は大きく減ります。
新卒エンジニアにインフラを教えていて感じたのは、技術的に正しい提案が通らない理由を説明できる人が少ないということです。この機器は固定費として毎年いくら乗るのか、何年で償却されるのか、その投資で損益分岐点はどこへ動くのか。稟議はこの言葉で書かれています。逆に言えば、この分野を学ぶことは、技術者が自分の提案を経営の言語へ翻訳するための訓練でもあります。セキュリティ投資が「コストにしか見えない」と言われる場面で、期待損失額と対策費用の比較として語れるかどうかは、実務の成否を分けます。1問のための暗記だと割り切って構いませんが、後で使う語彙が手に入ると思えば、費やす時間の価値は上がります。
次回、第15回は法務を扱います。知的財産権(著作権・特許権・不正競争防止法)、労働関連法規(労働者派遣法と請負の違い)、そして不正アクセス禁止法や個人情報保護法といったセキュリティ関連法規まで、SC試験で最も直接的に得点に結びつく分野を整理します。
本記事は情報処理安全確保支援士(SC)試験対策を目的として作成しています。
参考資料
- IPA 試験要綱・シラバスについて
- IPA 情報処理技術者試験 過去問題
- 企業会計基準委員会(ASBJ) 企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
- e-Gov法令検索:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)
- IPA 「情報処理安全確保支援士試験(レベル4)」シラバス(Ver.2.1)
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