午前1(科目A-1)で最後まで足を引っ張るのは、たいてい計算問題です。知識問題は知っているかどうかで5秒で決着しますが、計算問題は手が止まると1問で3分も4分も溶けます。しかも計算問題はテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系のすべてに散らばっていて、分野別に勉強していると「久しぶりに見ると解き方を忘れている」という状態になりがちです。
インフラエンジニアだった頃、私は稼働率という数字をほとんど意識していませんでした。ITILが世に出てくるまで、保守契約の内容もざっくりしたもので、可用性を数値で管理するという発想自体が現場に薄かったからです。逆に、CPUのスペックを見るときは周波数を最重視していて、自作PCのクロックアップも日常的にやっていました(上げすぎて熱暴走させたのも、いい思い出です)。試験の計算問題は、そうした現場の勘所を数式に翻訳したものにすぎません。式の意味が分かれば、覚える量は驚くほど少なくて済みます。
本記事はシリーズ第16回、第4部(総仕上げ)の1本目です。第1回から第15回までで分野別に扱ってきた計算問題を1本に集約し、「公式、当てはめ手順、例題、引っかけポイント」という同じ型に統一しました。分野をまたいで反復できるので、直前期の総点検にそのまま使えます。シリーズ全体の戦略は導入記事「元CIOが実践するスタミナ温存術!「コスパ極振り」最短エスケープルート・完全版ロードマップ」にまとめています。
なお、SC試験は2026年度からCBT方式へ移行し、科目の名称が変わります。午前Ⅰが科目A-1、午前Ⅱが科目A-2、午後が科目Bという呼び方です。これはIPAの試験要綱Ver.5.6(2026年7月6日掲載・CBT実施に伴う修正)に反映済みの名称です。試験区分そのものに変更はなく、出題範囲・出題数・試験時間も従来どおりです。制度変更の詳細は「【2026年度版】情報処理安全確保支援士試験のCBT化で何が変わる?科目A/科目Bの新名称と対策の変え方」で解説しています。本記事では検索でたどり着きやすい「午前1」の呼称を主軸に、新名称を併記して進めます。
午前1の計算問題は捨てるのではなく型で拾う
計算問題への向き合い方を先に決めておきます。全部を完璧に解こうとするのも、全部を捨てるのも、どちらも得点効率が悪いからです。
出題数と時間配分から考える現実的な目標
午前1は50分で30問、1問あたり約1分40秒です。この時間で複数ステップの計算を確実に処理するのは、正直きついものがあります。そこで鉄則は変わりません。問題文が長い計算問題はいったん飛ばして後回しにすることです。まず知識問題だけを拾って確実に得点を積み、余った時間で計算問題に戻ります。
ただし、後回しにするのと捨てるのは違います。本記事で扱うパターンは、公式さえ出てくれば30秒から1分で片づくものばかりです。型として覚えておけば、後回しにした問題を回収できる確率がはっきり上がります。
すべての計算問題に共通する4ステップ
分野が違っても、手順は同じ4つです。
- 単位をそろえる。ビットとバイト、秒とミリ秒、ナノ秒とギガヘルツ、円と千円。ここを最初に統一します。
- 公式を先に書き出す。数値を見る前に式を書くと、値の当てはめ先を間違えません。
- 代入して計算する。分母と分子の取り違えがないかを、代入の瞬間に確認します。
- 桁と単位で検算する。選択肢の桁がばらけている問題は、桁だけで正解が絞れることも多いです。

最頻出のつまずきは単位換算
講師として新卒エンジニアに計算問題を解かせていた頃、間違いが集中したのは公式の暗記ではなく単位変換でした。特にメガバイトからビットへの換算です。電卓もExcelも使わせていなかったので、受講者にとっては面倒だっただろうと今でも思います。実務ではシステムの容量計算で嫌というほど経験することになる、と伝えていましたが、試験の場でも事情は同じです。
計算問題はテストで解くくらいしか機会がないので、やり方は意外とすぐ忘れます。だからこそ、忘れる前提で手順のほうを覚えるのが合理的です。以下、パターンごとに手順を固定していきます。
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稼働率のパターンを1枚に集約する
稼働率は午前1で最も安定して出題される計算です。可用性の考え方はサービスマネジメントにも直結するので、費用対効果の高い分野です。
MTBFとMTTRから稼働率を求める
まず定義です。MTBF(平均故障間隔)は故障せずに動き続ける平均時間、MTTR(平均修復時間)は復旧にかかる平均時間を指します。
- 稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
- 故障率 = 1 ÷ MTBF
例題として、MTBFが45時間、MTTRが5時間の装置を考えます。稼働率は 45 ÷ (45 + 5) = 0.9 です。逆に稼働率0.9とMTTR5時間が与えられていれば、MTBFは45時間と逆算できます。
インフラエンジニア時代、ある公共機関のファイアウォールが障害でダウンし、翌日の朝までに復旧させるため徹夜で対応したことがあります。当時は「朝まで復旧」がよくある話でしたが、あれはMTTRを人力で押し下げていたにすぎません。式のMTTRという記号の裏側には、そういう夜が入っています。
直列構成と並列構成の式
- 直列(すべてが動いて初めてシステムが動く): 稼働率 = A × B
- 並列(どれか1つ動けばシステムが動く): 稼働率 = 1 -(1 - A)×(1 - B)
これらの式は各装置の故障が互いに独立して発生することを前提としています。共通の電源やネットワークを共有していて同時に落ちるような構成では、この式のとおりにはなりません。試験問題では独立性が暗黙の前提になっています。
稼働率0.9の装置2台なら、直列は 0.9 × 0.9 = 0.81、並列は 1 - 0.1 × 0.1 = 0.99 です。直列にすると下がり、並列にすると上がる。この方向感を体で覚えておくと、計算ミスにすぐ気づけます。

複合構成は内側から1つずつ潰す
試験で出るのは、直列と並列が組み合わさった構成です。手順は内側の並列部分を先に1つの装置にまとめること、これだけです。
例題です。装置Aと、並列に配置された装置B・装置Cが直列でつながっているとします。A = 0.9、B = C = 0.8 です。
- 並列部分をまとめます。1 - (1 - 0.8) × (1 - 0.8) = 1 - 0.04 = 0.96
- Aと直列にします。0.9 × 0.96 = 0.864
答えは0.864です。並列部分を先に潰すという順番を固定すれば、装置が5台に増えても手順は変わりません。
多数決システム(2 out of 3)と単純並列の違い
3台のうち2台が正常なら動作する多数決システム(2 out of 3)も出題されます。各装置の稼働率をaとし、3台の故障が互いに独立に発生するとすれば、稼働率は 3a²(1 - a) + a³ です。a = 0.9 なら 3 × 0.81 × 0.1 + 0.729 = 0.243 + 0.729 = 0.972 になります。
ここで注意したいのは、単純な並列(3台のうち1台動けばよい)なら 1 - 0.1³ = 0.999 になるという点です。何台動けばシステムが動くのかを問題文から読み取らないと、式そのものを間違えます。
稼働率とSLAをつなぐ
サービスマネジメントでは、稼働率が可用性の目標値としてSLAに書かれます。ここでの計算はサービス時間 × (1 - 可用性)で許容停止時間を出すだけです。
- 月間の24時間サービス(30日 = 720時間)で可用性99.5%なら、許容停止時間は 720 × 0.005 = 3.6時間、つまり3時間36分です。
- 年間(8760時間)で99.9%なら、8760 × 0.001 = 8.76時間です。
引っかけはサービス時間の取り方です。「平日9時から18時まで」と書かれていれば、母数は24時間ではなく営業日ベースの時間になります。母数を間違えると、公式が正しくても答えは合いません。
稼働率の構成別パターンは「システム構成要素の稼働率計算を攻略!直列・並列・RAIDの頻出パターン完全ガイド」で、SLAとの接続は「サービスマネジメントを攻略!SLAと稼働率計算・インシデント管理と問題管理の頻出パターン完全ガイド」で詳しく扱っています。
コンピュータ性能の計算パターン
CPU性能とメモリアクセスの計算は、式の形さえ思い出せれば確実に取れる部類です。
クロック周波数と命令実行時間
クロック周波数の逆数が1クロックサイクルの時間です。
- 1クロックの時間 = 1 ÷ クロック周波数
- 1.25GHzなら、1 ÷ (1.25 × 10⁹) = 0.8 × 10⁻⁹秒 = 0.8ナノ秒
ここが第一関門です。GHzとナノ秒の関係を暗算できないと、以降がすべて止まります。1GHzなら1ナノ秒、2GHzなら0.5ナノ秒、と数個だけ暗記しておくと速くなります。
CPIから平均命令実行時間を出す
CPI(Cycles Per Instruction)は1命令あたりに必要なクロック数です。命令の種類ごとに出現率とCPIが与えられたら、加重平均を取ります。
例題です。命令Aが出現率50%でCPI 2、命令Bが30%でCPI 4、命令Cが20%でCPI 10のとき、平均CPIは 0.5 × 2 + 0.3 × 4 + 0.2 × 10 = 1.0 + 1.2 + 2.0 = 4.2 です。クロック周波数が1.25GHz(1クロック0.8ナノ秒)なら、平均命令実行時間は 4.2 × 0.8 = 3.36ナノ秒になります。
MIPSの求め方は2通り覚える
MIPS(Million Instructions Per Second)は1秒間に実行できる命令数を百万単位で表した指標です。
- MIPS = 1 ÷ 平均命令実行時間(秒)÷ 10⁶
- MIPS = クロック周波数(MHz)÷ 平均CPI
先の例で確かめます。1 ÷ (3.36 × 10⁻⁹) = 約2.976 × 10⁸ 命令毎秒なので、約297.6MIPSです。もう一方の式でも 1250 ÷ 4.2 = 約297.6 となり、一致します。2通りで同じ答えになることを一度確認しておくと、本番でどちらの与え方をされても動じません。

キャッシュの実効アクセス時間
ヒット率をh、キャッシュのアクセス時間をTc、主記憶のアクセス時間をTmとすると、基本の式はこうです。
- 実効アクセス時間 = h × Tc + (1 - h) × Tm
ヒット率0.9、キャッシュ10ナノ秒、主記憶60ナノ秒なら、0.9 × 10 + 0.1 × 60 = 9 + 6 = 15ナノ秒です。
ここに定番の引っかけがあります。問題文が「ミス時はキャッシュを参照した後に主記憶を参照する」と定義している場合、ミス時の時間はTmではなくTc + Tmになります。上の例なら 0.9 × 10 + 0.1 × 70 = 16ナノ秒です。公式を機械的に当てるのではなく、問題文がミス時の動作をどう定義しているかを必ず読むことが必要です。
CPUとキャッシュの詳細は「コンピュータ構成要素を攻略!CPUとキャッシュメモリの計算問題・頻出パターン完全ガイド」で解説しています。
待ち行列理論M/M/1のパターン
待ち行列は「公式を1つ覚えれば取れるのに、覚えていないと絶対に解けない」典型です。コストパフォーマンスは非常に高い分野です。
ケンドール記法とM/M/1の前提
M/M/1はケンドールの記法で、左から順に到着分布・サービス時間分布・窓口数を表します。
- 1つ目のM: 到着がポアソン分布に従う(到着間隔が指数分布)
- 2つ目のM: サービス時間が指数分布に従う
- 1: 窓口(サーバ)が1つ
- 待ち行列の長さに制限はなく、規律は先着順(FIFO)
そして最重要の前提がρ < 1です。利用率が1以上だと行列が無限に伸びて定常状態にならないため、公式が成立しません。
覚えるべき公式
利用率ρは、到着率λとサービス率μ、または平均サービス時間Tsを使って表します。
- ρ = λ ÷ μ = λ × Ts
- 平均待ち時間 Wq = ρ ÷ (1 - ρ) × Ts
- 平均応答時間(待ち時間 + サービス時間) W = Ts ÷ (1 - ρ)
- 平均待ち行列長 Lq = ρ² ÷ (1 - ρ)
- 系内の平均客数 L = ρ ÷ (1 - ρ)
実質的に暗記するのはρ ÷ (1 - ρ)という係数だけです。これに平均サービス時間を掛ければ待ち時間、1を足してから掛ければ応答時間になります。
例題と、利用率が上がったときの跳ね上がり方
平均到着率が毎秒3件、平均サービス時間が0.2秒のサーバを考えます。
- ρ = 3 × 0.2 = 0.6
- Wq = 0.6 ÷ 0.4 × 0.2 = 0.3秒
- W = 0.3 + 0.2 = 0.5秒(Ts ÷ (1 - ρ) = 0.2 ÷ 0.4 = 0.5秒と一致)
ここで到着が増えてρ = 0.8になったとします。Wq = 0.8 ÷ 0.2 × 0.2 = 0.8秒です。利用率は1.33倍にしかなっていないのに、待ち時間は0.3秒から0.8秒へ約2.7倍に伸びました。利用率が1に近づくほど待ち時間は急激に発散するという性質は、選択肢の正誤判断でもそのまま問われます。

引っかけは待ち時間と応答時間の取り違え
問題文が聞いているのが「待ち時間」なのか「応答時間(滞在時間)」なのかを必ず確認します。待ち時間にサービス時間を足したものが応答時間です。ここを取り違えた答えが選択肢に必ず用意されています。
もう1つの引っかけは、条件が平均到着間隔で与えられるケースです。「平均到着間隔0.5秒」なら到着率λは毎秒2件です。逆数を取るのを忘れると全部ずれます。
容量と伝送時間の計算パターン
単位換算が主戦場です。式そのものは単純なので、換算さえ落ち着いてやれば得点源になります。
ビットとバイト、kとMの扱い
- 1バイト = 8ビット
- 通信速度の単位はビット/秒(bpsとも書く)、ファイルサイズの単位はバイト
- 通信速度や一般的なデータ量では 1k = 10³、1M = 10⁶ として計算する
- 記憶容量やアドレス空間では 1K = 2¹⁰ = 1024、1M = 2²⁰ = 1,048,576 を使う
どちらで計算するかは問題文の指定に従います。指定がない場合、回線速度は10進、メモリ容量は2進で考えるのが通例です。
伝送時間の公式
- 実効転送速度 = 回線速度 × 伝送効率
- 伝送時間 = データ量(ビット)÷ 実効転送速度(ビット/秒)
例題です。7Mバイトのファイルを、100Mビット/秒の回線(伝送効率70%)で転送する時間を求めます。
- データ量をビットに直します。7 × 10⁶ × 8 = 5.6 × 10⁷ ビット
- 実効速度を出します。100 × 10⁶ × 0.7 = 7 × 10⁷ ビット/秒
- 割ります。5.6 × 10⁷ ÷ (7 × 10⁷) = 0.8秒
もしステップ1でバイトのまま割ってしまうと0.1秒になります。8倍ずれた値が選択肢に並んでいるので、単位換算を飛ばした人はきれいに引っかかります。
記憶容量の計算
画像や表のデータ量を求める問題も定番です。1024 × 768ピクセル、1画素24ビット(3バイト)の非圧縮画像なら、1024 × 768 × 3 = 2,359,296バイトです。これは 2²⁰ で割ると正確に2.25Mバイト、10⁶ で割ると約2.36Mバイトになります。同じデータでも換算の基準が違えば数字が変わることを理解していれば、選択肢に2.25と2.36が両方あっても迷いません。
伝送時間とネットワーク側の計算は「ネットワークを攻略!OSI参照モデル・サブネット計算・伝送時間の頻出パターン完全ガイド」で扱っています。
損益分岐点と会計の計算パターン
ストラテジ系の計算は、割り算1回で終わるものがほとんどです。用語の定義さえ固まれば安定して取れます。
変動費率と限界利益率
- 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
- 限界利益 = 売上高 - 変動費
- 限界利益率 = 1 - 変動費率
限界利益とは、売上から変動費を引いた「固定費の回収に充てられる金額」です。ここが腹に落ちると、次の式が丸暗記ではなくなります。
損益分岐点売上高
- 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
例題です。売上高1000万円、変動費600万円、固定費300万円の事業を考えます。
- 変動費率 = 600 ÷ 1000 = 0.6、限界利益率 = 0.4
- 損益分岐点売上高 = 300 ÷ 0.4 = 750万円
- 現在の利益 = 1000 - 600 - 300 = 100万円
目標利益を加える応用もよく出ます。利益200万円を確保したいなら、(300 + 200) ÷ 0.4 = 1250万円の売上が必要です。固定費に目標利益を足してから限界利益率で割る、これだけです。
安全余裕率も押さえておきます。分母は損益分岐点売上高ではなく実際の売上高です。この例なら実際の売上高1000万円に対して、(1000 - 750) ÷ 1000 = 25%。損益分岐点比率は 750 ÷ 1000 = 75%で、安全余裕率と足すと100%になります。

引っかけは分母の取り違え
最も多いミスは、固定費を変動費率で割ってしまうことです。先の例では 300 ÷ 0.6 = 500万円となり、まったく違う値が出ます。分母は必ず限界利益率(1 - 変動費率)です。
もう1つは、変動費と固定費の区分を問題文と逆に読むケースです。売上に比例して増えるのが変動費、売上と無関係に発生するのが固定費という定義に立ち返れば防げます。
財務諸表や在庫評価まで含めた企業活動の計算は「企業活動を攻略!損益分岐点・財務諸表・OR/IEの計算パターン完全ガイド」にまとめています。
EVMのパターンは記号の意味で決まる
EVM(Earned Value Management)はプロジェクトマネジメントの計算です。記号が多くて敬遠されがちですが、覚え方には規則性があります。
PV・EV・ACの3つの基本値
- PV(Planned Value): 計画上、その時点までに完了しているはずの作業の予算額
- EV(Earned Value): 実際に完了した作業に割り当てられていた予算額(出来高)
- AC(Actual Cost): 実際に投入したコスト
EVは「実際にやった仕事を、計画の値段で評価した額」である点が要です。ACと混同すると、以降の指標がすべて逆になります。
差異と指標の作り方
- SV(スケジュール差異) = EV - PV
- CV(コスト差異) = EV - AC
- SPI(スケジュール効率指数) = EV ÷ PV
- CPI(コスト効率指数) = EV ÷ AC
- EAC(完成時総コスト見積り) = BAC ÷ CPI(現在の効率が続くと仮定した場合)
規則は単純です。差異はEVから引く、指数はEVで割る。スケジュールならPV、コストならACを相手にする。この2行で5つとも導けます。
例題
計画総予算(BAC)1000万円のプロジェクトで、ある時点のPVが500万円、EVが400万円、ACが450万円だとします。
- SV = 400 - 500 = マイナス100万円 → 進捗が計画より遅れている
- CV = 400 - 450 = マイナス50万円 → コストが予算を超過している
- SPI = 400 ÷ 500 = 0.8
- CPI = 400 ÷ 450 = 約0.89
- EAC = BAC ÷ CPI = 1000 ÷ (400 ÷ 450) = 1125万円、残作業の見積り(ETC)は 1125 - 450 = 675万円
差異がマイナス、指数が1未満なら「悪い状態」。この向きだけ覚えておけば、符号で迷いません。

引っかけはSVを時間の単位で答えさせる形
SVは金額であって日数ではありません。「2週間の遅れ」といった選択肢は、金額を問う設問に対しては誤りです。また、SPIとCPIのどちらがスケジュールでどちらがコストかを入れ替えた選択肢も定番です。SはSchedule、CはCostと素直に対応しています。
EVMとアローダイアグラムを含むマネジメント系の計算は「プロジェクトマネジメントを攻略!EVMとアローダイアグラムの計算パターン完全ガイド」で詳しく扱っています。
残りの計算パターンを最短で押さえる
出題頻度は上記より低いものの、出たら確実に取りたい計算をまとめます。
期待値の計算
期待値は(値 × 確率)の合計です。案件Aが確率0.6で500万円の利益、確率0.4で100万円の損失を生むなら、期待値は 500 × 0.6 + (-100) × 0.4 = 300 - 40 = 260万円です。
リスク分析でも同じ考え方を使います。1回あたりの損失額1000万円、年間の発生確率3%なら、年間予想損失額は30万円です。年間20万円で防げる対策なら経済的に見合う、という判断につながります。セキュリティ投資の議論はこの一行から始まります。確率と期待値の基礎は「基礎理論の壁を越える!離散数学とアルゴリズムの頻出パターン・完全攻略ガイド」で詳しく扱っています。
基数変換と2の補数
- 2進数 10110110 は、16進数ではB6、10進数では182(128 + 32 + 16 + 4 + 2)
- 2進数から16進数への変換は4桁ずつ区切るだけ(1011 = B、0110 = 6)
- 小数も同じ考え方で、0.011(2進)は 0.25 + 0.125 = 0.375
- 8ビットの2の補数で -5 を表すと 11111011(5の各ビットを反転して1を足す)
基数変換は手を動かせば必ず解けるので、時間さえ確保できれば取りこぼしません。2進数・16進数の扱いと補数表現の詳細は「基礎理論の壁を越える!離散数学とアルゴリズムの頻出パターン・完全攻略ガイド」にまとめています。
稼働率以外の信頼性指標
- 故障率 = 1 ÷ MTBF
- バスタブ曲線の偶発故障期のように故障率が一定とみなせる場合、直列システムの故障率は各装置の故障率の合計として近似できる
- バスタブ曲線: 初期故障期は故障率が下がり、偶発故障期は一定、摩耗故障期は上がる
計算というより読み取りの問題として出ますが、稼働率とセットで整理しておくと迷いません。
SC試験での出題パターンと対策
午前1の計算問題には、出題の型がはっきりあります。
出題される3つの型
- 公式に代入するだけの型: 稼働率、伝送時間、損益分岐点。値がそのまま与えられます。
- 逆算させる型: 稼働率とMTTRからMTBFを求める、目標利益から必要売上高を求める。式を変形する一手間が入ります。
- 性質を問う型: 利用率が上がると待ち時間はどうなるか、SPIが1未満なら何を意味するか。計算せずに関係だけを問います。
3つ目の型は計算不要なので、実は最も速く解けます。式の意味を理解しているかどうかが、そのまま所要時間の差になります。
過去問での扱われ方
稼働率、待ち行列、損益分岐点、EVMは、応用情報技術者試験の午前試験(科目A)や、高度試験・支援士試験の午前1(科目A-1)で繰り返し出題されている定番テーマです。年度をまたいで数値だけを変えた類題が出るため、過去問演習では答えの暗記ではなく手順の再現を目的にしてください。同じ問題をもう一度解けるかではなく、数値が変わっても同じ手順を踏めるかが本番の得点を決めます。
直前期の使い方
試験の1週間前になったら、本記事の公式部分だけを紙に書き出して、何も見ずに再現できるか試すのが効率的です。再現できなかった式に印をつけ、その分野の記事に戻る。この往復が最短のリカバリになります。
計算問題は解ける状態を維持するのにコストがかかりますが、逆に言えば直前に詰め込む価値が最も高い分野でもあります。知識問題と違って、覚える量が圧倒的に少ないからです。
【演習】午前1の計算パターン理解度チェック(全10問)
午前1の計算問題は、公式へ代入するだけの型、逆算させる型、式の性質だけを問う型の3つが出題の中心です。定番の引っかけは、直列と並列の式の取り違え、ビットとバイトの換算漏れ、待ち時間と応答時間の混同、損益分岐点を変動費率で割ってしまうミス、そしてEVMのSVとCVで引く相手を入れ替えることです。以下の練習問題で本記事の理解度を確認してみましょう。
まとめ:計算問題は忘れる前提で手順を残しておく
午前1の計算問題で覚えるべき式は、実のところ本記事に出てきた十数個で足ります。稼働率はMTBF÷(MTBF+MTTR)、直列は掛け算、並列は1から不稼働率の積を引く。MIPSはクロック周波数÷CPI。待ち行列はρ÷(1-ρ)にサービス時間を掛ける。損益分岐点は固定費÷限界利益率。EVMは差異がEVから引き算、指数がEVで割り算。この程度の分量です。
にもかかわらず失点が多いのは、式を忘れるからではなく使う手順が定着していないからです。単位をそろえ、公式を先に書き、代入し、桁で検算する。この4ステップを毎回同じ順序で踏むだけで、正答率ははっきり変わります。
計算問題は、テストで解くくらいしか出番がないので、やり方は本当にすぐ忘れます。だからこそ、解き直すたびに答えではなく手順のほうを紙に残すのが効きます。稼働率なら「分母は稼働時間と停止時間の合計」、伝送時間なら「まずビットにそろえる」という具合に、自分がつまずいた一言を式の横に書き添えておくと、次に開いたときの立ち上がりがまるで違います。
CIOとして投資判断をしていたときに実感したのは、こうした数字が意思決定の共通言語になるということです。可用性99.9%を99.99%にするための費用、待ち時間が跳ね上がる利用率の境目、対策費と年間予想損失額の比較。どれも本記事の式で表せます。試験のための計算に見えて、現場で予算を通すときに使う道具でもあります。1問のための暗記だと割り切って構いませんが、覚えた式が後で効いてくる場面は必ずあります。
次回、第17回は直前暗記シートと過去問道場の回し方です。本記事の公式部分は、その暗記シートに組み込むページとして使ってください。
本記事は情報処理安全確保支援士(SC)試験対策を目的として作成しています。
参考資料
- IPA 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱・シラバス
- IPA 情報処理技術者試験 過去問題
- IPA 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計情報
- JIS X 0014:1999 情報処理用語―信頼性,保守性及び可用性(日本産業標準調査会 JIS検索)
テンプレート集
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